2012/05/31

2030年の中国中間層-80~85%に達する?-

先日、EUの研究機関が北京で開催したシンポジュームで、2030年になると中国の中間層は80~85%に達するというレポートをして評判を呼んでいる。あと18年後のことだ。

私は、これは大嘘だと思う。まったく納得できる分析がないままの誇大妄想だ。こんな予測をする者たちに言いたい。「方々で農村調査をしてみなさい」と。

根拠の乏しいことにかけては、日本の自称中国通にも当てはまるところがある。2009年に出した拙著(朝日新聞出版)に、北京のある機関の事務所長をしているという人物が、いかにも知ったかぶりをして、批判文を、こともあろうに人民日報に投稿した。私は、自分の目と鼻と掌で確かめたこと以外は書かないたちである。この批判を私は無視したが、この人物と同じ知ったかぶり屋が書いたとしか思えないこのレポートが、いまの時期に公にされたことに、なんらかの不純な背景を感じる私はうがちすぎだろうか?

2012/05/23

ある中国の村にて―2012年5月-


中国、金の回り方が変わるとき

加々美氏の主張は次である。
中国政治はきわめて逼迫した情勢にあり、次期政権以後、早い時期に崩壊する可能性がある。薄煕来事件はその前兆としてみることができる。しかし、5月21日のNHK「クローズアップ現代」で解説した興梠氏が言うような、左遷に対する怨念として、重慶で薄煕来は毛沢東主義の礼賛をしたわけではなく、もっと構造的な危機にもとづく行動であったのだ、という。私も興梠氏の見方は浅く、説得力に欠けるという点では一致した。
また、加々美氏はいわく、広東省の烏坎(うかんで起きた農民の反乱は全国的に波及していく、と。

しかし、私と加々美氏の異なる点は、私は農村の民が怒ったのは村幹部の不正を怒ったのにはちがいないが、その怒りは正義心からではなく、村人への分け前分配のなさを怒ったのだという点である。だからといって、農民を批判することはできまい。

加々美氏は人柄がよく、私のようにワルではないのだ、と思う。

中国農村では、ようやく基層幹部がうまみの分配に預かるようになり、これから、すでにその段階を迎えている大都市近郊農村を除く辺鄙な鎮や区、郷、そしてその下の村段階に、そのうまみの分配がやっと、広範に降りていく段階に至った。
十分に「生血」を吸って、腹が生血でパンパンに膨らんだ蚊のような満足感が末端まで広がらない限り、現体制の基盤は揺るがない。
しかし、その後、分配の余力が消えていく。つまり、GDPの伸び率が落ちるのだ。そして、その中身はサービス産業化するから、金の回り方が決定的に異なったものになる。つまり、金回りはそれでおしまいとなり、農民には最後まで行き渡ることはない。それが分かった段階で、やっと農民の怒りは抑えようのないものになるのだ。

加々美氏との対話

昨日、久しぶりに、学校で加々美氏と会った。学生が行き交う校内の廊下で、「たかはしさーーん」と呼ぶやや甲高い声が2,3回したので後ろを振り返ると、ナップサックの紐を羽交い絞め式に身体に巻きつけた加々美氏が笑顔で歩いてきた。
足取りは確かで、話し方や笑顔にも健康が戻っていた。笑顔で応えた私は、一階の食堂に誘い、コンビニで買ったアイスコーヒーを飲みながら、話しが弾んで90分も話し込んだ。
話題は中国の政治情勢(加々美)と農村の民の話し(私)だった。
微妙な違いはあるが、おおまかなところでは意見の一致をみた。
  
話しの具体的な内容は、明日からの中国出張から帰った後にしたい。これから午後の授業が始まるので。

2012/05/21

なぜ、私はTPPに賛成なのか

TPPに賛成である。

「TPPは農業・農民をつぶす」と、のどを嗄らして叫んでいる反対派の中に、実は農業と農民をつぶす役割を演じている者がある。
私はいつでも、どこでも農民の味方でいたい。どこでも、というのは、日本、中国、東南アジア、どこでも区別はない。
農業と農民をつぶす者は、市街地のなんと真新しい立派なビルに住んでいることか。この点は、日中共通である。日本も中国も農業所得だけで生活していける農民は、ほんの一握りだということも共通。そして、高齢化の甚だしさも共通している。


中国の農民は怒っているか?

中国農民のことを聞かれることがある。

○曰く、彼らは生活に満足しているのか?
○全土的な農民の反政府暴動は起きるのか?
○若者は村に残っているのか?
○貧富の差が拡大しているのに、農民に跡継ぎはいるのか?

 私の答えは、すべて NO だ。 
 2番目の質問に対する答えには「ただし」が付く。
 ただし、経済成長率が5%の線を超えたとき、農民と都市の半失業労働者はもはや、おとなしくできない可能性が極めて高い。 

2012/05/20

今春のゼミ生の就活は順調

私には4年生のゼミ生が19人いる。学部では多い方である。いま彼らは就活に忙しいが、今年は昨年以上に順調に内定をいただく傾向が強い。学生によっては大企業の内定を3つももらい、うれしい悲鳴をあげる者もいる。早々、内定先が決まり、ゼミでは卒業研究に専念したり、はやくも夏休みの計画を立てたりと、忙しいが指導教員としては、残る学生生活を楽しんでほしいし勉強もしてほしいという気持ちが強い。内定先は、大手物流企業、航空会社、自動車企業、家電メーカーなどなど。
 先日、大手企業で働くゼミ卒業生が、久しぶりに学校に姿をみせに来た。卒業して一年も経つと、やはり社会人の雰囲気が漂うが、私にとっては元ゼミ生である。職場の話しなども聞いたが、仕事を楽しんでいる様子に安心した次第である。

2012/05/18

日中関係の現状

日中関係の進展度を産・官・学・民の視角からみると、その順位は次のとおりであろう。
1、産=経済
2、民=人的交流(相互旅行を含む)
3、学=日中共同研究または中国研究、日本研究
4、官=政治・外交



2012/05/15

日中韓FTAとTPPに思う

年内の日中韓FTA交渉入りが合意されたが、おそらくは、TPPへの日本の参加がより確実にならなければ、この話は来年に持ち越しとなろう。中国は、三カ国FTAをTPPへの日本の参与度と天秤にかけながら進めるつもりだ。まずは韓国とのFTAを先行させ、その推移をみながら日本との交渉に臨む姿勢である。この点は、韓国も同様であり、場合により日本は仲間外れに会う可能性も否定できない。
 そこで重要となることは、日本のTPPに対する関わり方だ。私は、TPP参加が今後の日本にとって極めて重要な選択だと思っている。国際社会のなかで日本が選択できることは昨今減っているが、TPPは久しぶりに、日本が主体的に選択肢に直面する課題である。
 日本はTPP交渉で主導的な役割を担い、そして日中韓FTAやASEAN+3においても重要な位置を占め、発言権を強めるべきである。

2012/05/07

産学連携

明日から、ある企業の方々と一緒に中国出張です。いわゆる産学連携ですが、向こうでは地方政府と合作するので、産官学連携となるでしょうか。中国では、官学産と立ち位置がやや異なります。企業との連携事業でもっとも大事で難しいことは、学問的専門性に企業的センスや実務的感覚を織り交ぜることです。