2012/06/02

農産物輸出協議会失敗の原因

農民同士の交流があるといいと思う。日中農業交流というと、団体間交流、にわか親善組織間交流、政治家間交流が一般的で、本当の、普通の農民レベルの交流は皆無といってよい。
現状は、それができない。農民同士は互いに関心がないし、中国の普通の農民は日本へ経済的理由や招聘上の問題から事実上渡航ができない。日本の普通の農民は、自力では会いたい農民にたどり着くことができない。
こうした制限が、庶民レベルの日中間の相互理解を隔てている壁の一つなのだ。
いま問題の中国へ農産物輸出をしようと各界が疑惑の中国人と一緒に作った団体の失敗も、相手の実情を無視して、欲の皮が突っ張った自称中国通の学者やジャーナリストの話に騙されて日本の農産物を売ることしか頭にない偏狂な組織の思惑が先行した結果だ。

円と元の直接取引はじまる/中国の円買い

‎6月1日、円と人民元の直接取引が始まった。相場は、ドル介在水準とほぼ同じなのは当然としても、直接取引相場の登場は歴史的な意義を持つことである。私は、人民元が早急に完全な国際化を果たすべきだと思っているので、今回の出来事はその動きをさらに一歩強める働きをすると期待したい。
世界第二位の経済規模を持つ中国の人民元がはやく独り立ちすることが、円に逃げてくる国際通貨市場の動き(円への逃げ相場)を緩め、過剰な円高を抑制する働きを担うことに通ずるのである。

現在人民元は管理変動相場制という固定相場制と変動相場制の中間的な仕組みを採用しており、一日当たりの変動幅を上下3%に制限している。また、詳しくは報道されないが元売りドル買介入を頻繁に行い、元・ドル相場の安定に苦心している。
私は、円高進行の大きな要因の一つに、国際外為市場における中国政府による巨額の円買い介入が暗躍しているとみている。
今回の円と元の直接取引の開始は、この動きを容易にする仕組みの登場という一面もあることに留意すべきである。もっとも、実際の円買いをだれがどこで、行っているか闇なので、いまのままでも円買いを思いのまま進めることができる。なにせ、中国には3兆ドル以上の外貨があるのだから。

2012/05/31

2030年の中国中間層-80~85%に達する?-

先日、EUの研究機関が北京で開催したシンポジュームで、2030年になると中国の中間層は80~85%に達するというレポートをして評判を呼んでいる。あと18年後のことだ。

私は、これは大嘘だと思う。まったく納得できる分析がないままの誇大妄想だ。こんな予測をする者たちに言いたい。「方々で農村調査をしてみなさい」と。

根拠の乏しいことにかけては、日本の自称中国通にも当てはまるところがある。2009年に出した拙著(朝日新聞出版)に、北京のある機関の事務所長をしているという人物が、いかにも知ったかぶりをして、批判文を、こともあろうに人民日報に投稿した。私は、自分の目と鼻と掌で確かめたこと以外は書かないたちである。この批判を私は無視したが、この人物と同じ知ったかぶり屋が書いたとしか思えないこのレポートが、いまの時期に公にされたことに、なんらかの不純な背景を感じる私はうがちすぎだろうか?