2019/04/03

中国の農業政策の方向は大規模革新農業経営の樹立にある

 各地の中国農村を回っていると気づくことがあります。共通する点は、若者と中年層が少ないこと。未舗装の村の家々が連なる薄茶色の小道を歩きながら思うことです。とくに若者が少ない、というよりもほとんど見かけることがないことです。

 将来、中国の農業や食料生産はどうなるのかと、気をもむこともありました。
 しかし、最近は考えを徐々に変えるようになりました。

 生産性の低い限界地は次第に淘汰され、条件のよい場所では大規模経営が発達し、一部では農業生産の効率を上げていくことでしょう。大規模化の進展は中国農業の大きな光明です。いま各地で、日本では想像もつかない斬新な農業方式が生まれ、これに政府が支援するモデルが広がっています。

 でも、それで自給率は大丈夫なのか、との心配がないではありません。ありますが、不足する食料は輸入で補充する方向に行くでしょう。農産物貿易の数字をみていると、中国が、すでに農業の国際競争力を失いつつあるか失ったことがうかがわれます。

 学者の一部は、これを農村の賃金上昇に求めていますが、理由はそれだけではありません。土の劣化、零細農業、農業資本装備の立ち後れ、若者層の農村忌避思想の広がり、安い農産物価格、高い肥料・農薬、安全な農産物生産農法の不足などもその理由です。

 効率の悪い農業は淘汰し、競争力のある農業を中心に構造改革を断行していく様子が見えてきました。


2019/03/28

土は国家を語る

私が長い間、研究上こだわってきたことに土があります。中国農村の野菜畑やトウモロコシ畑などへ行くと、まず素手で畑の土を握って、匂いを嗅いで、見つめます。この作業は、日本でも、東南アジアでも、どこへ行っても続けてきました。

私は、土には二つの顔があると考えています。
新鮮かつ栄養分のつまった農産物を育てるための養分の貯蔵庫 としての顔。この顔は農産物にとっては何よりも重要なものであり、農業生産にとっての生命線でもあります。この顔は土の持っている物理的な性格を示しています。

しかしこの顔は、土が生まれながらにして持っている部分と、後で雨や風、雑草や木の葉など、やはり自然による作用で変わった部分、農民や国家など人工的な手が加えられることによって変化した部分とからなります。土地改良や肥料投下などによる方法がそれです。土を機能論的に観たものです。

もう一つの顔は土自身が持っている、土を使っている国家を反映する鏡としての一面で、この顔は土の社会科学的な性格を表すものです。この顔は土が生まれながらにして持っている顔ではなく、農業用の土となってから、土の利用者や国家など、土に直接・間接に関係する者が土壌 養分や水分を付け加えたり削ったりした結果の顔であり、原状から変化していることが多いといえます。

この顔は、土を表象論的に観たものともいえます。
最近これをもとに、「中国における土資本論」を考えています。まだ、これといった成果はできていませんが、こだわってみたいと思っています。