2023/10/22

中国が遺伝子組み換え食品の食品表示法を改正する動きを鮮明にしました。

 中国農業農村部は10月17日、「農業遺伝子組み換え生物表示管理法」改正の決定についてのパブコメ募集の通知を発したのですが、次のように変えたい意向を示したものです。

1,遺伝子組み換え原料を使用している農産物がそうでないものと混在している場合、「遺伝子組み換え」農産物を使っていることを明記すること。


2,該当する品目は大豆、大豆粉、大豆油、豆粕、大豆たんぱく、豆かす(豆くず)、トウモロコシ、トウモロコシ油、トウモロコシ粉、トウモロコシかす、トウモロコシ粕、食用油用野菜、同原料とする食用油、その粕、綿実油、綿実粕、アルファルファ、パパイヤ。


3,これらの食品またはこれらを原料とする加工食品に、これらを3%以上を含む場合、「遺伝子組み換え食品」として明記する義務がある。


中国は大豆とトウモロコシを中心に、これらの農産物等を大量に輸入しています。棉を除き、国内生産には慎重です。輸入先のアメリカ、ブラジルのこれら農産物、菜種やパパイヤを生産している国の場合も、ほとんどは遺伝子組み換え生産ですので、この法律が施行される年末か来年には、スーパーの食品売り場のこれら食品・食材の包装材には多数の「遺伝子を含む」という文字が躍ることでしょう。

2023/08/16

台風5号の中国農業への影響は甚大の模様、「害虫の口から穀物を奪取せよ」

 

今年の中国大陸は気象危機に見舞われている様子が伝わってくる。

農業農村部は8月8日、被害の深刻な河南省安陽市で現地「秋穀物重大病虫防除」会議を開催、現下の情勢について視察し対策を協議したと、同部は広報していた。

とくに被害の大きな安徽省の6市21県、河南省11市60県ではヨトウムシ、ワタキバガ、イネヨトウ(写真)が大発生、トウモロコシ,イネ,大豆、落花生に大量の産卵がみられ、その防除に取り組み始めたところらしい。ニカメイガは昨年の同じころにも発生したので、今年は多くの種類の作物の難敵である害虫が発生したことになる。

そんなことから「害虫の口から穀物奪取せよ」という合言葉が流行しているそうな。

台風の影響は広範に及んでいる。

北京、天津、河北、山西、内モンゴル、吉林、黒竜江、浙江、福建。

心配なのは今年の作柄である。

政府は災害復旧に乗り出しているが、台風5号までの高温と豪雨被害の影響もあり、今後の成り行きが懸念されている。






2023/06/27

穀物の収穫、今年もお天気が最大の敵に

 中国の気象局には、農業専用サイトがありほぼ1週間単位で小麦やトウモロコシやコメなど、重要な穀物の作況や植え付け、栽培管理、収穫時期、天気図、その予測など、専門的な話で埋まる。


そのサイトから拝借した左の2つの図の上は、6月26日の全国の気温上場をあらわし、下は降雨の様子をあらわしたものだ。


上の図は、35度C以上の高温地帯が北部の中央から南部の中央にかけて山脈のように連なっている様子が一目瞭然であろう。


下の図からは南部のコメ作地帯が強い降雨に覆われている様子をうかがうことができると思う。


このような、北の高温、南の降雨という現象はここ数年のように起きているものだが、今年は、北の高温、南の降雨という二極化が鮮明になり、それが毎日のように続いていることが過去にないことになっている。

南部の降雨は日本列島に居座る梅雨前線の一体化している点も、ここ数年の特徴といえば特徴なのである。

中国農業の専門家なら「三夏」という言葉を知らない者はいない。陰暦の四月を猛夏、5月を夏の中盤、6月を夏そのもの、といったような意味だが、農業では収穫、播種、栽培管理の区分として使われることもある。「三つの夏」を三年という意味で使うこともある。

いま、今年の三夏を豊作を実現しながらどう乗り切るか、という点に農業農村部も気象局もやっきの様子が伝わってくる。

全体の収量の3割程度の冬穀物(前年の冬の前に播種し、夏まえに収穫期を迎える穀物)の収穫の約7割を超えたいまであるが、豊作の声はあまり聞こえてこないが、もう少し様子をみてみようと思うこの頃である。そのうち、続きをおしらせしたいと思う。













2023/05/17

今年の作柄と天気、小農経済、スパイ防止法

 今年も春穀物の作柄がどうなることか、気になりだした。とくに空模様と気温が気になる。天気のニュースをみると、早くもあまりいい話が出てこない。

昨年は日本もそうだが、中国もあちらこちらで天候不順のため作柄が心配された。この方面の事情は、気象関係の役所がかなり詳しく、実態を伝えてくれている。天気の動向を今年も丹念に追っかけようと思っている。

もう一つは最大の担い手、小農経済が苦しさから脱する機会を得られるか、という点だ。私のみるところ、政府当局もこの点では苦慮している模様である。

この点は、中国における農業の生産力と制度の動向に大きな転機となる可能性もあろう。

夏を迎える時期になり、はやく現場へ行きたいのだが、躊躇する気持ちもないではない。改正されたスパイ防止法を読むと、運用次第で、だれもが標的にされる恐れが否定できない。研究者が標的の中心に置かれている感じもないではないので、迷う気持ちが捨てきれない。

どうしよう・・・・・・!




2023/03/05

農民少なくして農地多し・・・中国、今の実態

コロナ禍で減少していた2021年の農民工(主に住民登録のある故郷から離れて、6か月以上都会に住んで、農業以外の仕事に就く農民=出稼ぎ農民)の数が、なんと2億9千万人に上ったと、中国国家統計局が発表した(昨年)。

これも同じ国家統計局のデータだが、農業等就業人口(正確には第一次産業就業人口)が1億7千万人しかいないのに、出稼ぎ農民がそれよりも1億人以上も多いというのはおかしいことだが、両方を合わせると4億6千万人、幼児や学童を含む農村人口が5億人しかいないのだから、この数はどうみても理屈に合わないところがある。

この点はともかく、農民工が2億9千万人もいるという点に焦点を当てると、性別は男性が64%、女性は36%、未婚者17%、既婚者80%、死別者3%という。

この大量の農民工、短くても半年以上のあいだ農村や農業現場から離れるわけだから、実質的には離農・半離農に等しくはないだろうか。

農村に残って農業に従事する者が最大でさきほどの1億7千万人、実際は漁業や林業従事者も含まれるので、本当に農業中心の農民は1億7千万人ではなく、1億人2千万人程度と思われる。

農民の2億9千万人は農業から事実上離れているとすると、中国1億2千万ヘクタールの農地は1億2千万人ほどの者が耕している可能性があり、だとすると1人当たりでは1ヘクタールということになる。

農地は二期作とか二毛作とかとして利用されるので、耕地面積は増える。統計によると、中国では1億7千万ヘクタールに達するので、1人当たりでは1.4ヘクタールという勘定になるではないか! 多い!

中国の農業の特徴は「多人地少」、人口が多くして土地は少なし、といわれているが、実態は、農民少なくして農地多し、なのではないかと思うこの頃である。





2023/01/12

中国2022年産穀物は実質マイナスだった可能性

2022年産の糧食(穀物+イモ類)生産量は6億8,653万トン、2021年の6億8,285万トンに比べ0・5パーセント・24千トンの増加でしかなかった。2021年が前の年を2パーセント・134万トン増えたのと比べるとかなりの差だ。

実際はマイナスだったかもしれない。

発表では、2022年の小麦の生産量の増加はわずか0.6パーセント、トウモロコシは1.7パーセントの増加、大豆は作付け奨励補助金の効果もあり19.6パーセントの増加だがコメは2パーセントの減少だった。最近、コメの生産は伸び悩む傾向があるがかなり大きな減り方だ。

穀物の庭先価格や政府買い取り価格が下がったわけではなく、生産費が上がったことが大きな理由だろう。

中国の農産物生産費は、主要国の中では日本に次ぐ高さになった。主に農薬・肥料・農業機械・地代・人件費などの上昇による。

根本の問題は、中国式農地制度のあり方が限界に来た点にある気がする。

 

生産量に勢いが乏しい理由としてはほかに2つ、1つは作付面積がほとんどの穀物で縮小していること、もう1つは土地生産性(面積単位当たり生産量)の伸びに勢いがなくなっていることだ。

穀物それぞれ土地生産性は未発表だが、穀物全体では前年を下回る。前年比で0.99。

土地生産性が伸び悩んでいることは、農地制度自体の問題、そして土壌の改良や灌漑設備の改良・新設が期待したほどには進んでいない可能性も。特に懸念されるのは土壌劣化である。最近、政府は「黒土化」つまり土壌改良に力を入れ始めた。いいことである。

2022年の作付面積は穀物全体で0.6パーセント増えたが、コメ・小麦・トウモロコシは減った。耕地面積の拡大には限りがあるにしても自給率が低下するなか苦しい選択をしたものだ。

2021年に対し作付面積の減り方が大きかったのはコメでマイナス1.4パーセント、トウモロコシ0.6パーセント、小麦0.2パーセントと、大豆を除く主要な穀物の作付面積が減少した。

中国の農産物価格は今後、上昇傾向を強める可能性がある。一般家計の負担増に直結する。一方、企業業績はストレスをため込んでおり、賃上げに応じることは難しいかもしれない。低下しつつあった家計のエンゲル係数は再上昇、庶民の生活を直撃する可能性も否定できまい。