2024/03/19

中国農民の顔の表情

中国へ行きたい最も大きな理由は、むらむらのあぜ道や広い見晴らしの真っ平らな畑の側の道端をあるきたいがためである。

何があるわけでもないし、特別の違いがあるわけでもない。新潟のコメ作地帯の集落で生まれた身にとって、どこであっても、農村の光景は何処と無しに、故郷の香がする。

中国の農村はなお発展途上にあることも事実である。筆者の眼から、日本の農村との最大の違いは、区画整理が済んでいない田んぼがなお目立つこと、用排水路が未整備なこと、灌漑施設が不十分なためか、排水が十分でないことなどは、改善の余地があると映る。

都市近郊、たとえば河北省の都市近郊には中型のトラクターに乗った農民の姿を多く見かけるが、たとえば江西省の水田は区画整理が遅れ、しかも専業農家が限られるせいか、トラクターで作業中の農民を見かける機会も限られた。農業は日本の委託経営のようにひと任せだ。

しかし、どこの農民も、よく似た環境にあることを痛感する。素朴な顔をしていることも共通する気がする。土着的な風情が漂う。だから好きだ。

都市住民は、やはりどこの国だろうと似ている。顔は青白く、無症状で、どことなくカリカリしている風情だ。心の底に、一人ひとりがだれかの、何かの、代表のような自分を探しているからだろうか・・・・・・。

その点、何をも代表しない自分がそのまま顔に出ている素直さが農民にはある。







2024/02/27

畜産物輸入を抑えるため、米と小麦の生産量を下げ、輸入を増やし、トウモロコシの生産を増やす中国

 中国政府は昨年末から今年の初めに、2023年の食糧生産の実績をかなりこまかく発表しました。

まず発表どおりの内容をかいつまんでお知らせします。

作付面積:1億1900万5000ヘクタール

収穫量:6億9541万トン

収穫量の増加率:1.3%


1ヘクタール当たり収穫量:5.843トン(10アール当たり584.3キログラム)


収穫増加量(2022年比):888万トン

作付増加面積(同)    :636,432ヘクタール


1ヘクタール当たり収穫量:13.95トン(10アール当たり1395キログラム)


これが事実であれば、なんと!!!、新しく増えた作付面積についての新しく増えた収穫量(増加土地生産性)(1395kg/10アール)は、従来の作付け面積全体の収穫量(土地生産性)(584.3kg/10アール)の2.38倍!ということになります。常識では考えられないことです。


新しく増えた作付面積についての収穫量の増え方が従来の増え方と同じとすると、収穫量の増加は888万トンではなくて、約372万トン(5.843×636,432)のはずでしょう。

もし収穫量の増加が372万トンにとどまるとしたら、2023年の収穫量の増加率は1.3%ではなく自動的に、0.55%に下がることになります。


中国の4大穀物の収穫量の前年比は、米:マイナス0.9%、小麦:マイナス0.8%、トウモロコシ:プラス4.2%、大豆:プラス2.8%でした。

収穫量が最大の穀物はトウモロコシ、近年、増え方も大きくなっています。その理由は簡単です。飼料として需要が高まるトウモロコシの収穫量を増やすことは、需要が増える畜産物の輸入を抑え、国内生産を増やすことができるからです。


米と小麦の収穫量をトウモロコシに回した、ということですね。

国家経営的な目から見ると、価格の高い畜産物の輸入を、それにくらべて価格の安いコメと小麦の輸入に代えた方が得、ということでしょう。トウモロコシの価格は?、米や小麦よりさらに安いのです。なので、中国はトウモロコシの輸入量もけっこうなものです。

ますますおいしい畜産物の消費が増えるはずですので、中国の今後は、畜産物を軸として米、小麦、トウモロコシ、大豆が作付け・貿易の調整が行われていくでしょう。というのは、もう国内には適当な農地資源がありません。農民が増えることもありません。10年先の中国農村は日本の10年前の農村を鏡で写すと分かりやすいかもしれません。









2024/01/11

中国農村調査は継続困難か?

農村が好きな私は日本の47都道府県の農村(そのすべての農村ではないけど)に足を運び、中国では、チベット自治区・海南省・ウイグル自治区・貴州省・広西自治区を除く省・自治区の農村調査をしてきました。

農村調査というのは、農家+農地。家畜を見て初めて、面白さが伝わってくるものです。農村と農家がとても好きなのです。北京も上海も天津も杭州も何度も行きましたが、どの都市も、私には何の興味も魅力もありません。

新潟県の北蒲原郡の稲作農村で生まれた私は、イネのにおいが染みついているのだと思います。

中国で最も多く行った農村は寧夏回族自治区・河南省・山東省・河北省・山西省かな。。。。。。内モンゴルも多い方です。

最もきれいな農村はなんといっても、羊とバクが群れを成す青海省の高原、標高4000メートルを超えるところでした。私は4500メートルを超えると呼吸困難になる性質で、平地まで運ばれて入院した苦い経験がありますけど。

訪れた農村はどこも印象的で、新しい発見をさせてくれる宝庫です。

新型コロナが流行り出した2019年12月を最後に、私の中国農村のたびは途切れたままです。そろそろ、と思ってはいたのですが、あまり気力がわいてきません。

最近の中国政府が外国人に現地研究に蓋をする動きがかなり鮮明になってきたことも一因です。その気配は以前からあったのですが、昨今の農村には外国人監視の目が張られるようになり、調査内容によっては無許可の機密情報の取得者扱いをされないとも限りません。

農村地帯のあぜ道を1人でぶらつくことが好きな私にとって、窮屈そのものです。歩きながら、畑の土をにぎり臭いを嗅ぎ、観るのが趣味です。どんな肥料を使い、どのくらい耕しているか、大体分かることも理由です。

中国農村調査仲間のあいだにも不安が広がりつつありますね。中国農村調査のベテラン、友人のO氏のように「もう、中国は行かない」と宣言した人もいるほどです。

さて、どうするか・・・・・・・、と思いながら、40年ぶりの台湾の農村へ行きたくなりました。南の八田與一が建築に協力した灌漑施設も見てみたい、とも思っています。