2014/11/01

食品表示制度についての大新聞の誤解もしくは認識不足

遺伝子組換え食品にかぎらず、日本の食品表示制度には要注意です。


次は、ある大新聞(私が信頼を置く新聞の一つです)が遺伝子組換え農産物がアメリカ、フィリピンで盛んに作られていることを報じた最近の記事です。


「日本では組み換え作物の栽培は認められているものの、研究機関での試験栽培を除き、販売目的の商業栽培は行われていない。大豆、トウモロコシ、ナタネなど大量の組み換え作物を米国などから輸入。輸入トウモロコシの約7割は組み換えで、家畜の餌、食用油の原料、清涼飲料の甘味料などに使われている。輸入ナタネも約9割が組み換えだ。

 日本国内では組み換え作物への抵抗感が依然として強くスーパーなどで販売されている豆腐や納豆など「表示義務」が課せられた食品は組み換えでない原料が使われている。(毎日新聞 2014年10月31日)



青字の部分が問題のか所です。

日本の食品表示制度によれば、食品(加工食品)に遺伝子組換え作物が使われていても、赤字で書いた部分(ただしがき以下)の条件を満たすと、その事実を記載する必要がありません(農水省資料)。
  • 「ただし、次のいずれかにあてはまる食品には、遺伝子組換え農産物の使用の有無についての表示がないことがあります。
    • 大豆(枝豆、大豆もやしを含む)、とうもろこし、ばれいしょ、なたね、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤのいずれもが食品の主な原材料(注1)ではない
    • 遺伝子組換え農産物を原材料として使っていても、組み込まれた遺伝子やその遺伝子が作るタンパク質が製品中に残っていない(例:油やしょうゆ)
    • 遺伝子組換えでない農産物を原材料として使っている


    • (注1)
      主な原材料とは、使った量を重い方から順に並べたときに3位以内であって、すべての原材料の重さに占める割合が5%以上である原材料をいいます(ただし、水は除く)。」

  • 青字の部分は、よく間違われる部分ですが、遺伝子組み換え作物(食品原材料)や農産物そのものは、この条件に隠れて忍び込んでいると考えた方がいいでしょう。

  • この点は遺伝子組み換え食品全般にかぎらず、あらゆる食品原材料に当てはまります。

  • 毎日、摂る食品の4%は遺伝子組換え食品かもしれませんし、軽くても量の多い非表示義務のない危険な原材料や食品が氾濫している可能性も否定できません。
  • 実態を知ったうえで、食べるか食べないかを決めるのは個人の自由ですが、まずは真実を知るべきでしょうし、知らせるべきでしょうね。

2014/05/02

中国「世界の工場」の終わり―「世界の財布」へ

中国の成長は、「世界の工場」になることでした。78年以来30数年、ひたすらその道を走ってきました。それもどうやら最終コーナーを残すだけになったように思います。中国「世界の工場」の終わりです。

GDPのうち、ついに第三次産業が第二次産業を凌駕することになりました。こうなると、経済成長は緩みます。資本の回り方、巡り方が徐々に変わっていき、資本装備は増やす必要もなくなり、設備投資も土地開発投資も従来のような勢いを失い、おカネが更に余り出します。

おカネが不足する間、成長は続きますが余り出しますと、成長は必要ありません。お金が溢れているのに、さらに求める理由がなくなるからです。欧米も日本も同じ経験をしてきました。

今後の中国経済の呼び方は、そうです。「世界の財布」です。しかし、溢れ返って、泡となる懸念もないではありません。

2014/04/25

日米首脳会談と共同声明と「桜吹雪」

今週は、時間の推移がなぜか長く感じました。北京から帰った後、仕事が溜まっていたことも理由のひとつでしょうか?

日米首脳会談とあの共同声明、あまり実質的な成果はなかったように思うのですが・・・・・。
なにか、風とともに散る紙製の桜吹雪を観るような空虚さを覚えたのです。

もともと、「尖閣奪取」のために「華」の国が軍事行動に出ることはありえないのに、なにかの空文と引き換えに、TPP交渉で米に借りを作る始末。
「満額回答」とはしゃぐ国際世間オンチが我国の中枢とは、なんと情けないことでしょう。

それにしても、アメリカの凋落ぶりは痛ましさを覚えるほどですね。オバマ大統領の姿に、威厳は見えず、普通の国の首相のような雰囲気しか感じられなかった。
それでいいのでしょうけど。

威勢のいい割に偽被害者風であっても困るし、やみくもにもっともらしい威厳をまき散らす偽正義漢風であっても困りものです。


さて、明日から英文投稿論文を作りはじめます。
テーマは、中国農地資本ストックの国家収奪によるその国家への移転がいびつなシャドーバンキングを招いていることを論じるものです。
ドラフト完成まで、たぶん、速くて3か月。英文推敲にひと月、ネット公開される時期は早くて年末でしょう。





2014/04/21

先週は忙しかったです。
16日夜10時からNHK「国際報道2014」に出演、翌日は、「夕刊フジ」の著者インタビュー、夕刻に名古屋に戻り、12:30発の飛行機で北京へ。

宿に着いたのが、飛行機が遅れに遅れて午前3時、8時からシンポに参加、報告、夜は宴会。しかも、二回(うち一回は、在北京の博士課程ゼミ生や卒業生と)、そして翌朝、7時にホテルを出て帰国です。1泊3日の変則出張でした。

今日21日は東海ラジオで番組「チャイナ・ナウ」二回分の収録、放送は5月18日、25日、日曜日です。朝、8時45分=9時までですのでお聞きください。

今回は二回目の出演ですが、一回目(18日)が中国農業の現状と二回目(25日)は現在取組んでいる日中産官学連携事業の紹介です。

2014/04/01

新年度初日に想う

きょうは、2014年度の初日です。
中国農村は、少しずつですが変化してます。富裕層や中間層が使うおカネが、知恵のある農民に回り始めているのです。

商業性のある農産物を作る、貯蔵するなどによってはひと月で5000元も稼ぎ出す農民は少なくありません。5000元は日本円で8万円程度ですが、中国の農村では、苦も無く暮らせる額です。

先週会った農民は冷蔵庫を4台預かり、その中に貯蔵する冬ナツメの管理料のみでかなりの生活水準にたどり着いています。しかし、ここには農民の智恵と経験がありました。智恵には経験が経験には智恵が薬ですね。極意、技能、そんなことがこの農民にはありました。

日本の農民も同じです。同じ茶豆を作っていても、一軒ちがえば味も香りも違います。技術は伝承・普遍化できますが、極意や技能は無理です。1人で会得する以外にありません。

話しは変わりますが、この中国の農民は、私たちを自分でも分からない方言を話す中国人、と思ったようです。私は、田舎の農民の話す中国語には閉口するので現地の人に通訳を頼み、ゆえに私が話したのは日本語です。
でも、彼は日本語を聞いたことが初めてだったので、私たちを自分が理解できないほどひどい放言を話すどこかの中国人だと思ったのでした。中国は広い!

2014/03/03

3月20日、文春新書『日中食品汚染』が発売になります。食品汚染問題は中国、というのは誤りです。
日本にも問題があります。この点をくわしく書きました。