日本では米の流通量が不足して、価格の高騰を招いていますが、世界最大の米の消費国家である中国はどんな様子なのでしょうか?
日本の米流通は、江戸時代から、船場や「相場」という言葉が米の取り引き(堂島米会所)が盛んだった大阪で生まれたことに象徴されるように、米は日本最古の市場取引物資だったのですね。全国の津々浦から米を吸い上げ、大阪に集めたのですか、その仕組みの複雑さと堅牢さは、他の商品にくらべ抜きん出ていました。
その基本的な仕組みは現代まで引き継がれ、それが柔軟さに欠ける要因にもなっているのではないでしょうか?日本の米流通は、昔の仕組みを引きずっているのかもしれません。
さて、中国ですが日本とまったく事情が異なって、米に歴史的な形と言うものがありません。旧い流通システムは、共産党が破壊してしまって、消費生協のような供銷合作社という名の商店のような組織を全国津々浦の消費地に配置して、国家統制的な流通を展開してきたのです。
しかし、これもいまや過去の話し。
米はO2O流通が主流に
中国人は、世界でもっとも新しもの好きといえると思うのですが、いまや、消費者が買う米はO2O、オンラインto オフライン 、スマホでECのプラットフォームに注文すると、30分以内に注文主の自宅に届く、という方法が都市の流行、流行というか、買い物の仕方として定着しているのです。
この30分、というのが勝負なのです。注文から30分以内に届けないと、この注文主から、次の注文はありません。
オンラインというのは、スマホで注文、オフラインというのは注文した米を現物で手にする、という意味で、O2Oの 2はtoすなわち両者をつなぐ、という意味ですね。
ただし、オフラインには二つのパターンがあります。
いまの例のように、30分という短い時間内に注文主に届ける、という方パターンと、注文主が注文した米をスーパーとか米やさんの実店舗に取りに行くというパターンです。
いまは、バイク便のような配達が人気です。
生産された米はどこへ行くのか?
農家が生産した米には、3つの流通ルートがあります。以下は、そのうちの2つについて焦点を当てましょう。残るもう1つは、政府備蓄米としての販売ですが、今回は捨象します。
●伝統的な多段階流通ルート
比較的小規模農家(中国の大部分がこれです)が「米販子」と呼ばれる米集荷人(ブローカーですね)が村単位で米を買い取ります。
米販子は、集荷した米を農民専業合作社(短粒種の一大産地となった五常大米合作社などは有名です)へ売り渡します。
その後、地域にある、けっこう広域的な産地卸売市場に集められ、精米工場へ回されます。米は、ここまでは玄米の状態です。
そして精米工場で精米され、等級化され、都市の消費卸売り市場(北京ですと、有名な新発地卸売市場が有名ですね。二三度行きましたが、ここは非常に大きい市場です。)へ回されます。
精米されていますから、消費はのんびりできません。しかし、このとき、スーパーや米の小売店に行くことがおおむね決まっていますから、問題はありません。
●ECルート
これには、少なくとも3つのパターンがあります。
(1)合作社ルート:
農家から農民専業合作社等に集荷されます。集荷された米(玄米)はひとまず、ここでストックされます。
消費地近郊の倉庫へ移動、適量を精米します。
次に、ECプラットフォーム(ウイチャット、抖音小店など)を経由して、注文が来ますと、出荷です。
(2)O2O生鮮ルート
農家から美団などの産地EC倉庫へ輸送します。
次いで、都市消費地の拠点倉庫へ。一定量を精米保管。
注文が来ると、30分以内に配達します。
(3)企業契約栽培ルート
企業が稲作農家と栽培の契約を結びます。
収穫後、米は、玄米のまま農家から消費地近郊倉庫に輸送され、そこで保管されます。
そこで、一定量の精米を確保し保管します。
京東などの予約サイト注文を受けて、米は注文主に配達されます。
消費者は、QRコードから、注文した米の生産者がどのような人で、どのように栽培されたかを知ることができます(トレーサビリティ)。
これらにさまざまなバリエーションが加わる、豊富なルートが形成されています。
ますます中国の米流通は合理化され、消費者サービスの向上がはかられつつあります。いったいどこまで、発展するのでしょうか?