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2025/05/25

2024年産中国の穀物7億トンの大台に達する、一方で大量輸入の現実

中国農業農村部 の韓俊部長(大臣)は、さきごろ、中国の2024年産穀物生産量が史上はじめて、7億トンの大台に達したと発言し、注目されています。

もっとも、中国の穀物は「糧食」と表現され、薯類を含みます。また、コメ、小麦、大麦、トウモロコシ、あわ、コウリャン、きびなども含まれる、定義として幅広い穀物類を指しています。

しかし穀物の定義の広さを考慮しても、7億トンという数字は、とても多いものであることはまちがいありません。

 中国の人口は約14億人、一人当たりの生産量は約500キログラムになりますね。 私の計算では、穀物は、直接の食料、畜産物の飼料、次の作付けのための種子、デンプンなどの若干の工業原料などの需要に応じようとすると、一人当たり500キログラムは必要となります。

 その意味でも、中国は需給が均衡する生産量を確保したことになるでしょう。中国の穀物の方策にはおめでとう!というべきでしょうね。

 

とはいっても、手放しでは喜べない事情があることを忘れてはなりません。

 

それは、穀物の輸入量が毎年のように、大きな数量を数えているという点です。

2024年1年間の「糧食」輸入量は薯類を除いて1億5,800万トン(前年比ではマイナス2.3%でした)、大麦25.8%増の1,400万トン、コウリャン66%増の870万トン、大豆6.5%増の1億50万トンなど増え続けるものも少なくありません。

 

その他、小麦やトウモロコシは、それぞれ1,000万トン以上、豚肉や牛肉 670万トン、食用油950万トン(食用油1トン精製するには、5トン度の穀物や種子が必要です。換算すると5,000万トン程度の穀物などを輸入したことになります)と続きます。 

 

こんなに多くの生産量があるのに、なぜこんな大量の穀物や肉類、食用油の輸入が行われているのでしょうか??? 不思議と思われる方も少なくないことでしょうね・・・・

  そのすべての理由は、私にも分かりません。謎なんです!!!

 理由の一つは、農産物と畜産物の価格レベルが、国産>輸入となっているからです。この点は、データから確認できます。

もう一つの考えられる理由は、生産量についての地方政府からの中央政府への届け出に、データと推定値との間の乖離です。

中国ほどの広い面積、約1億3,000万ヘクタールもの土地の収穫物は実測ができません。サンプルによる生産量の推定なのです。推定には、5%程度の誤差はつきものですから、それだけで3,500万トンもの差が生れます。

 もし、これに水増しのような手心が加えられたりすれば、優に、5,000万トンは実態からズレることになりかねません。

 

中国の「統計法」は運用が厳しく、かりに、農産物の生産に虚偽の報告があった、となれば責任者は即刻の首です。ですから、意識的に、このような統計不正が日常化しているとは思われません。

収穫量の実際と報告との間には、上述のような意味での誤差を理由とする乖離があり、それが国産量の「豊作」にもかかわらず、大量の輸入が避けられない理由の一つと思われるのです。

 

ですから、作付面積一定、気象悪化、農業の担い手減少と高齢化なども考慮すると、実際のところ、穀物生産の7億トンというは、なお難しいのではないか、と思います。