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2024/09/06

今年の早稲は、作付面積は増えるも単収が減っている-その背景とは?

 中国国家統計局が8月下旬に発表したところによると、2024年の早稲(ワセ)生産量は、

2023年を0.6%、163,000トン下回る28,174,000トンという。

 

作付面積は47,548,000ヘクタール、2023年を0.5%、217,000ヘクタール上回った。

 

10アール当たりの生産量は592.5キログラム、2023年を1.0%6.16キログラム下回

ったという。

 

結局、全体の作付面積は増えたものの生産量は減ったということになる。このところ、中

国の早稲生産は、作付面積と単収の2つが同時に減少する動きを続けており、その結果と

して輸入が増える反作用も生まれているのだ。

 

作付面積の減少の理由は2つ。

 

一つは、このところの干ばつ、大雨による異常気象がもたらす農地被災の拡大である。つまりは、そのために作付面積が途中で減少するのである。中国の統計では、作付面積は田植え面積ではなく、実際に農産物を収穫した面積である。

 

早稲の主な生産地帯は南方の湖南、江西、広東、広西自治区などなのだが、最近は、田植

えが終わり、田に根が張り出すちょうどその頃に、大雨や洪水が直撃、多くの稲作農家

の首を締め上げているのだ。

 

二つには、米の作付自体を嫌う農家が増えていると見られること。農家の後継ぎが減り、高齢化が進み、体力と費用のかかるコメ作り農家が減っているのだ。

 

私はこれまで、何十年間も、中国の方々で遭った農家に「息子に農業を継がせる気があるか?」と尋ねてきた。これは、日本の全国の農家を回っていた時と同じ質問だった。しかし例外なく、中国農民の答えは「継がせない」で一致していた(日本でもほぼ同じ)。

 

自分の苦労を、率先して子供にも継がせたいと願う親はいない。もうだれも、意に反することを強制できる者や集団の圧力は、中国にも存在しなくなったのだ。

 

作付面積が減少しただけでなく、単収も減っているのだがその理由も二つ。

 

一つはやはり異常気象と水田土壌の劣化。異常気象は今後も続くだろうが、一層、深刻なのは、農薬と化学肥料ですっかり変わってしまった水田土壌の改良が、遅々として進まないことだ。各地の水田を歩き、必ずや田の中の土や泥を握って観てきた。

 

水田土壌は、極端なはなしだが、まるで植物工場の水耕栽培かスポンジ栽培かと思えるくらい殺伐としている。これでは単収は減る一方だろう。

 

二つには、それでもなお作付面積を多く見積もり過ぎの可能性である。実際の作付面積は、政府の見立てよりも、実際は更に少ない可能性がある。

 

各地で起きている現象だが、コメを作るといいながら、水田をもっとカネになる野菜栽培やビニール温室、さらには禁止されている商業用地に変える問題も起きている。農地を住宅地に変えるなどの「大棚房」として、大きな問題にもなっている。

 

こうなると、統計上の作付面積を実際の面積が下回り、こんなはずじゃなったということになりかねない。

 

2024/02/27

畜産物輸入を抑えるため、米と小麦の生産量を下げ、輸入を増やし、トウモロコシの生産を増やす中国

 中国政府は昨年末から今年の初めに、2023年の食糧生産の実績をかなりこまかく発表しました。

まず発表どおりの内容をかいつまんでお知らせします。

作付面積:1億1900万5000ヘクタール

収穫量:6億9541万トン

収穫量の増加率:1.3%


1ヘクタール当たり収穫量:5.843トン(10アール当たり584.3キログラム)


収穫増加量(2022年比):888万トン

作付増加面積(同)    :636,432ヘクタール


1ヘクタール当たり収穫量:13.95トン(10アール当たり1395キログラム)


これが事実であれば、なんと!!!、新しく増えた作付面積についての新しく増えた収穫量(増加土地生産性)(1395kg/10アール)は、従来の作付け面積全体の収穫量(土地生産性)(584.3kg/10アール)の2.38倍!ということになります。常識では考えられないことです。


新しく増えた作付面積についての収穫量の増え方が従来の増え方と同じとすると、収穫量の増加は888万トンではなくて、約372万トン(5.843×636,432)のはずでしょう。

もし収穫量の増加が372万トンにとどまるとしたら、2023年の収穫量の増加率は1.3%ではなく自動的に、0.55%に下がることになります。


中国の4大穀物の収穫量の前年比は、米:マイナス0.9%、小麦:マイナス0.8%、トウモロコシ:プラス4.2%、大豆:プラス2.8%でした。

収穫量が最大の穀物はトウモロコシ、近年、増え方も大きくなっています。その理由は簡単です。飼料として需要が高まるトウモロコシの収穫量を増やすことは、需要が増える畜産物の輸入を抑え、国内生産を増やすことができるからです。


米と小麦の収穫量をトウモロコシに回した、ということですね。

国家経営的な目から見ると、価格の高い畜産物の輸入を、それにくらべて価格の安いコメと小麦の輸入に代えた方が得、ということでしょう。トウモロコシの価格は?、米や小麦よりさらに安いのです。なので、中国はトウモロコシの輸入量もけっこうなものです。

ますますおいしい畜産物の消費が増えるはずですので、中国の今後は、畜産物を軸として米、小麦、トウモロコシ、大豆が作付け・貿易の調整が行われていくでしょう。というのは、もう国内には適当な農地資源がありません。農民が増えることもありません。10年先の中国農村は日本の10年前の農村を鏡で写すと分かりやすいかもしれません。









2021/08/29

中国のコメの早生収穫さえず

 中国のコメの早生品種の収穫が終わりました。1年間のコメの収穫量全体に占める早生品種の割合は10~13%といったところですが、1年間の収穫量の動向を占う指標ともいえるものです。

中国政府の発表によると、2021年の早生品種の収穫量は2802万トン、これだけで日本の1年間のコメ収穫量の4倍くらいにもなる大変な量です。中国の1年間のコメの収穫量はだいたい2億トン強という大きな量になります。


早生品種を栽培しているところは、主に湖南、江西、貴州、四川など南方です。

コメは小麦、トウモロコシと並んで中国では3大穀物の一つ、収穫量は小麦のだいたい1.5倍です。収穫量自体が最大はトウモロコシの2億6千万トンくらいですが、飼料用・加工用が大部分で、日本のスイートコーンのようなものはまだ少ないので生食用は限られます。


さて、そのコメの早生品種なのですが最近、次のようなことになっています。やや注目されますので取り上げました。

1,最近(2015~)、収穫量が低迷。前年を下回ることも頻繁に。

2、コメの作付面積がはっきりとした減少傾向にある。

3,単位面積当たり収穫量が低迷、減少する傾向がはっきりと確認できる。

けっして需要が減っているわけではありません。むしろ増えており、不足を輸入に頼る傾向がはっきりしてきています。

日本のコメのように需要減少で供給が余って困るなどというゼイタクはむかしからありませんでしたが、一時期、自給体制が出来上がった時期もありましたので、それにくらべると、現在は、かなり窮屈な食糧事情を迎えつつあるといえるでしょう。

こうした傾向はコメに限ったことではありませんが、ここではコメに焦点を当てています。


こんな話を中国の人に向かってすると、かならず返ってくることばに、

「いまの中国は食べものに苦労はない。あなたはどこの国の話しをしているのか?」

というのがあります。

不足分は輸入しているのですから、食べものに苦労している実感があろうはずはありません。この点は、中国よりも食べものの輸入依存が強い日本ですら当てはまる

ことです。

 

収穫量の低迷は3種穀物全体に見られる現象なのです。中国の食糧(中国語では「糧食」)には3種穀物の他、大豆、高粱、キビ、アワ、小豆などだけでなく薯類が含まれます。日本では薯類は統計的に別扱いです。

こうした食糧事情の変化が起きていることに対して中国政府は、「非糧化」(コメ作農地などを、大豆や野菜などに転作)、「土壌劣化」、「洪水など気象変動」などをその主な理由としています。

これらに加え、私は農地公有制に限界がきているからだとみています。

中国の農地所有者を誰だとお思いでしょうか????

答えは、無しが正解です。私は、中国の憲法をはじめ、土地や農地に関するあらゆる法律、施行令、条例を読破しましたが、土地も農地も、その所有者がだれか、どこにも書いてありません。 なぜでしょう????

それは体制のなかに、巧みな、そして意図的な背景があるからです。