2019/06/04

中国農村技術のかたちと今後

中国の農村技術-農産物栽培・保管・加工・出荷、土地管理技術、水利管理技術は今後どうなるのだろうか?現在、日本顔負けの先端技術が登場し、中国の農村自身が驚くほどの発展がみられる。しかし、技術には担い手と開発者がないと発展しない特性がある。技術は社会的なもので、そこから個人的な概念である技能や術(わざ)が派生し、あるいは新しい技術を生み出す役割をになう。

近代、現代にかけて中国の農村技術の担い手と開発者は、長い地主の時代を経て集団(組織)、家庭(個人)と受け継がれてきた。家庭請負責任制が生まれてから、農民にとって増産は所得向上に直結するようになったので、農民自身が「発明の母」の役を演じ、技術開発の先導を担うようになり、食料は一部の農産物を除くとほぼ自給体制を作り上げるうえで貢献した。

農村技術は土地や土と密接に繋がっている。土地制度のあり方、土と農民の心理的・物理的密着度が農村技術の発展とあり方を決めるといっても過言ですらない。

こうみてくると、いま、中国農村で起きていることは技術の担い手と開発者にどんな影響を与えるだろうか?

いま中国で起きていることは、農業を生業として生きる者(純粋な農民)がほぼいなくなったこと、日本の農水省が定義する専業農家に合う農民世帯は皆無だということだ。父母と息子夫婦が専業として農業経営と生計を立てうる者は、中国ではほぼいないし、その存在自体が不可能に近いのだ。

そこで生まれているのが企業の農業参入、合作社による集団農業(供銷合作社と農民専業合作社があり、農民の土地使用権を株式化するなどして出資金に変え、配当として収益の一部を農民に還元、農業経営の大規模化を目指す)、「家庭農場」(家族経営の中国版で規模を自立経営並みを志向)、「新農民農業」(若い学のある非農民による投資的経営-私の言い方では「異星人農民」)などのかたちだ。

彼らは、土地制度と土との関係で新しい関わり方を作り始めた。共通しているのは現在の土地制度を利用し、土地を集めるだけ集める。不要になったら捨てる(だれかに権利を渡す)。

だからいまの土地制度は彼らにとって都合がよい。もともと農民の制度だった家庭請負土地使用権制度は徐々に変節し、農業をやりたい者には解放している。ここは、日本とは大違い。中国の方が自由といえば自由なのだ。

土は地力を吸い取るだけ吸い取って、その後は路地大規模農業から転換し、既存の土地を利用したビニールハウス栽培、植物工場、観光農業、農村遊技場とかあるいは食品加工場とかに進出する。土地改良投資はカネがかかるのでしない。政策も植物工場やコンテナ農場の支援に大きな予算を投じようとしている。露地栽培に、あるいは伝統作物にこだわらない。そこから新しい技術が生まれ出てきている。

土地改良投資や土の機能維持のための投資をしないことは問題であるが、すべてはフローの国中国。これがストック重視の日本だと稲作農家は何代も米にこだわり、キャベツ農家はキャベツ以外は作らない。他のものができないストック投資方式から出られないからだ。

中国の農村技術はますます自由に発展する可能性がある。