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2023/01/12

中国2022年産穀物は実質マイナスだった可能性

2022年産の糧食(穀物+イモ類)生産量は6億8,653万トン、2021年の6億8,285万トンに比べ0・5パーセント・24千トンの増加でしかなかった。2021年が前の年を2パーセント・134万トン増えたのと比べるとかなりの差だ。

実際はマイナスだったかもしれない。

発表では、2022年の小麦の生産量の増加はわずか0.6パーセント、トウモロコシは1.7パーセントの増加、大豆は作付け奨励補助金の効果もあり19.6パーセントの増加だがコメは2パーセントの減少だった。最近、コメの生産は伸び悩む傾向があるがかなり大きな減り方だ。

穀物の庭先価格や政府買い取り価格が下がったわけではなく、生産費が上がったことが大きな理由だろう。

中国の農産物生産費は、主要国の中では日本に次ぐ高さになった。主に農薬・肥料・農業機械・地代・人件費などの上昇による。

根本の問題は、中国式農地制度のあり方が限界に来た点にある気がする。

 

生産量に勢いが乏しい理由としてはほかに2つ、1つは作付面積がほとんどの穀物で縮小していること、もう1つは土地生産性(面積単位当たり生産量)の伸びに勢いがなくなっていることだ。

穀物それぞれ土地生産性は未発表だが、穀物全体では前年を下回る。前年比で0.99。

土地生産性が伸び悩んでいることは、農地制度自体の問題、そして土壌の改良や灌漑設備の改良・新設が期待したほどには進んでいない可能性も。特に懸念されるのは土壌劣化である。最近、政府は「黒土化」つまり土壌改良に力を入れ始めた。いいことである。

2022年の作付面積は穀物全体で0.6パーセント増えたが、コメ・小麦・トウモロコシは減った。耕地面積の拡大には限りがあるにしても自給率が低下するなか苦しい選択をしたものだ。

2021年に対し作付面積の減り方が大きかったのはコメでマイナス1.4パーセント、トウモロコシ0.6パーセント、小麦0.2パーセントと、大豆を除く主要な穀物の作付面積が減少した。

中国の農産物価格は今後、上昇傾向を強める可能性がある。一般家計の負担増に直結する。一方、企業業績はストレスをため込んでおり、賃上げに応じることは難しいかもしれない。低下しつつあった家計のエンゲル係数は再上昇、庶民の生活を直撃する可能性も否定できまい。


2022/04/19

中国の農地制度が質的な転換をし始めたことについて-農地請負資格者に「商工企業等社会資本」を追加-

中国の農地制度の基幹となる法律は「中国農村土地請負法」というものです。2003年に制定されてから15年がたち、この法律を支えるはずの農村の社会基盤が大きく変わりました。

2018年、この法律は質的な転換を図りました。ついに、それまで禁止されていた、農地請負権の資格者に、「商工企業等社会資本」と呼ぶ「資本制企業」を認めることにしたのです。これには資格者としての妥当性を審査する要件を設けましたが、実質的にはこれら資本の農業経営への直接参入を許容したといえましょう。

「中国農村土地請負法」は中国農地制度の脱社会主義化の一歩、農民は耕作の自由の拡大を通じて生産意欲を膨らませ、食料生産の社会的増加に大きく貢献するようになれたのでした。

しかし中国の経済社会の大きな変化・膨張は、やはり農村のあり方を根本から変えました。古い時代に生まれた発想は、時代の変化とともに農地制度をも新しいものに変えざるを得なくなったのです。

同法の社会基盤だった若者は農村から消え、農家世帯は高齢者が占め、若い夫婦は都会に出稼ぎに行き、お金を稼ぎ、生活もレベルや食生活も向上しました。

他方、家族的結びつきの弱体化が進んでしまいました。後継ぎするはずだった子供はみな進学、専門学校や大学へ、卒業後は都会に就職・定住、古い農村基盤が崩れるのは抑えることのできない必然だったのです。

農業の担い手が個人(農民)から企業へ、しかも単なる企業ではなく資本制企業という、利潤を目的とするものへと広げざるを得なくなったのですね。

中国農業はますます資本主義的になり、やがては私的営利企業が農業と農地制度の担い手の中核に成長する可能性が濃厚になってきたように、私には思えます。


この改正にともなって、農地の出し手と受け手が交わす農地請負契約書の書式も変わり、ようやく2021年に、そのひな形も公布されました。中国の農地制度は、またまた大きく質的に変わり始めています。