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2025/12/10

中国、ネズミとの勝負には勝てぬ?

 世界には1,600種のネズミがいるという。ネズミと言っても「いえネズミ」、「野ネズミ」、「草原ネズミ」など、生態によって異なる。ただ、雑食だが、どちらかというと穀物や植物の根や茎など、それぞれ好みがある点でも共通する。

 中国には1,600種のうち、どのくらいの種がいるかまでは分かっていない。比較的一般的なネズミはドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミ、ハタネズミ、大倉ネズミ、モグラ型ネズミ、モンゴルスナネズミ、ダウリアジリス、ジャンプ型ネズミといわれる。

 棲息地域別の主な分布にも若干の特徴があり、ドブネズミは全土、クマネズミは南部・沿岸部、ハツカネズミは全土、ハタネズミは華北―東北、大倉ネズミは遼寧・河北・山東など、モグラ型ネズミは青海・甘粛・四川など、モンゴルスナネズミはモンゴル・新疆、ダウリアジリスは華北・モンゴル・東北、ジャンプ型ネズミは新疆・甘粛の砂漠地帯とされている。

 ネズミはどの国にもいて、どの国にも迷惑をかけ、ときに、人間生活や経済活動に大きな害を与える。げっ歯類のなかでも凶暴、戦闘的、高い繁殖力、雑食、病原菌保持、賢こさ、集団性など、やっかいな習性のもとで生きている。

 かりに人間が滅んでも、ネズミの方は生き残る、という学者もいるほど生命力が強い生き物だ。

 世界では、毎年、収穫された穀物の20%がネズミ被害によって損失しているという。2024年の世界の穀物生産量は、FAO(国連食料農業機関)によると28.5億トン。その20%は5.7億トン、だから単純にいうと、2024年に、実際に供給に回ったのは22.8億トンということになろう。

 人類の飢餓が救われるかもしれない大量の穀物が、ネズミに横取りされているということだ。

 では、中国ではどうか、穀物生産量が65,000万トン程度の中国で、その20%というと1億3,000万トン、大変な量である。

 政府からは公式なデータは伝わってこないが、穀物の損失率の世界平均の20%よりも、中国の損失率が高いことも十分に想定できよう。ネズミが棲息するには好条件があまりにも揃っている。

 なにせ、中国にとってネズミは良きにつけ悪しきにつけ、身近かな生き物の一種なのである。

 それはどういうことかというと、大躍進や文化大革命時代、食糧が不足した時代、住民のなかには、ネズミが穴深くに隠した貯蔵穀物を失敬して、飢えをしのぐ足しにした人がいたという話もある。持ちつ持たれつの関係が、人とネズミの間にはあったのである。

 この話は、実際に、実際に自分が体験したという中国人から聞いたもので、私の創作ではない。

 持ちつ持たれつとは言っても、損害は人間の方が圧倒的に多く、ネズミが人間にとってはにっくき生き物である点に変わりはない。

 そこで、国を挙げたネズミ退治が常に重要な取り組みになる。とくにどこでも行われるのが、ネズミ退治訓練やネズミ退治運動である。

 この運動は、ドローンを使っての殺鼠剤の撒布や薬による不妊化対策、鷹やキツネなどの天敵の普及が全国土を対象に恒常的に行われている。

 しかし、ネズミが減ったという話は、これまでに聞いたことはない。もしかして、ネズミの頭脳の方が人間よりも上、ということか・・・・・・・。

 



写真は青海省の三江源近くのネズミとその穴(筆者が、待つこと30分して撮影)。

2022/06/07

穀物自給率100%未満が大部分、149か国・84%も

 


 このほど統計がそろう世界178か国のカロリーベース穀物自給率(対象は畜産物の飼料を含むコメ、小麦、トウモロコシ、大豆)を試算してみた。最新の統計データ(FAO:酪農品に補足上の弱点があるので留意の必要あり)は2019年。

その結果、自給率が100%以上の国・地域は29、わずか16%にとどまることが分かった。残りの149か国84%は100%未満(グラフ参照)。

もっとも高いのはウクライナ500%を超える。ちなみにロシアは117%。両国はいつ終わるとも分からないドンパチをやっていることもあり、世界の穀物の需給は不安定さを増す。

世界最大の穀物生産国の中国(本土)は80%そこそこ、日本は、といえば驚くなかれ

21%少し。この秋、日本の穀物と畜産物(豚肉・牛肉・鶏肉・酪農品・・・)の価格は円安の拡大ともあいまって、高騰する可能性がある。


世界の穀物自給率の分布を地図にすると、地政学的食糧地図ができあがる。地図の黒っぽいところは少なく、白に近いところが大部分だ。世界には、自給率ゼロの国も16か国、10%以下を含めると、なんと46か国も。その多くの国はアフリカ、中東にある。

輸出余力のある、100%以上の少数の国は南北アメリカ、ウクライナ、ロシア、豪州、フランスなど欧州のごく一部にとどまる。

しかしどの国も地球をめぐる新しい変化、たとえば気候危機、土壌危機、農薬など化学物質汚染に直面し、貧しい国ほど、豊かな国による食料買い占め競争や戦争・紛争のあおりをうけ、食糧が手に入りにくくなっている。貧しい国は二重の理由から深刻な食糧危機に直面しつつある。


2022/01/09

中国の穀物在庫急増の影響と背景 日経新聞にコメントしました(紙面をクリックすると全開します)


 

 最近、中国は世界の5大穀物の新規在庫増の約半分を占めています。日経新聞2021年

12月19日日曜版は、この問題を一面トップに掲載しました。見出しがこの記事の概要をそのまま言い表しています。

ここに、求められたコメントをしました。全国紙の中で、最も中国農業に詳しい記者を擁するのは日経だと思います。各地に記者がおり、筆者がしばしば電話話しをする在中国のお二人の記者は本当に詳しいです。在中国のNHK記者の中にも詳しい記者がいます。

新型コロナが落ち着いたら、現地農村で、彼らと中国農業について話し合いたいと思っています。