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2021/07/21

海水稲は成功するか?

 稲作の最大の敵の一つは塩分だ。稲の持つこの弱さを克服しようと「発見」され、品種改良を続けているのが、中国の稲の父と言われ、先ごろ亡くなった袁隆平氏率いた青島海水稲研究発展センターだ。

もともと海水稲は1986年、広東海洋大学の陳日勝という研究者が「発見」し、実用化の研究を始めたのが始まりと言われる。これを稲と言えば袁先生、ということになって、研究の権威付けと商品化の道を探り始めた、というのが近いらしい。

海水稲とはどんな稲なのか?文献によると、塩分濃度が0.3%以上でも栽培できる塩分耐性種なのだそうだ。塩分0.3%といってもピンとはこない。

通常、日本ではpH濃度がこの方面の指標だから、塩分0.3%をpHに換算できないかと、あれこれ方法を探してはみたものの、筆者の手には負えないことが分かったので面倒くさいことは止めた。

ならば、ということで海の塩分濃度を調べたら大体、3~3.5%だそうだ。0.3%というと海水を10倍に薄めた程度だから、かなり濃度は高い。海水浴のシーズンになったので海へ行かれる方は、ぜひ、試しに10倍に薄めた海水を適当に飲んでみてください。きっと、みそ汁を薄めたようなものではないかと想像します。

もともと中国全土はpHが高い。つまりアルカリ性の高い農地がほとんどだ。中国とは逆に酸性土壌の多い日本の常識でもpH7.5くらいが限界で、6~7くらいを標準におく土づくりや品種作りをする。

ところが、中国では、いつか、どっかにも書いた記憶があるが8とか8.5とかpHの高い土壌はざらなのだ。

よく日本の農業技術者や農業経験者が中国へ行かれて、農業技術指導面で苦労される話を聞くことがあるが、中国と日本とでは、土壌の重要な性質の一つの尺度が真逆であることが災いすることも大きな理由ではあろう。

さてこの海水稲、試験収量は10アール450キログラムというからまあまあ。味は知らないが、精米色はかなり茶色かかっているようだ(写真)。

できれば、普通のジャポニカ系かインディカ系の白い米がいいに決まっているが、中国なりの事情もあって、新しい銘柄米への成長・発展を願っているというところだと思う。背景には、コメ不足があるであろうが、やがておいしいブランド米誕生の成功を祈りたい。


2021/01/09

中国米の味と今後の変化

  中国で食べるコメの味はお世辞にも、良いとは言えないと思うのは、日本人だけかもしれません。昔の日本米は日本晴れという品種に代表されるように、味より量、少しでも収量の高いコメが優れた品種とされてきました。

 ところがいまや、日本米はブランド勝負、つまりは味勝負の時代になりました。スーパーで売られているコメはほぼブランド米か、有名な優良品種だけとなりました。

 高いのは新潟県の南魚沼産の無洗米コシヒカリ、無洗米北海道産ななつぼし、山形産のつやひめ、岩手産ひとめぼれなどですが、私は新潟県の岩船産コシヒカリも相当なものだと思います。故郷の近くということもあるかもしれませんが、残念ながら、私の生まれ故郷の中条産はあまり有名ではありません。おいしさにかけては岩船産にも負けてはいないのですが。

 では中国のブランド米にはどんなものがあるでしょうか?

 河南省原陽米、吉林舒欄米、黒竜江省五常米、遼寧省柳林貢米、河南省原陽米、その他いくらでもあります。ただし、ブランド米を全国統一的に規格化し、消費者に対する威厳ある組織によるものではなく、かなり勝手で宣伝的な要素が強いブランド化ですので、公平といえるかどうかは疑問です。 

 もう一つ日本とはちがって、中国米独特の留意が必要な点があります。それは、中国ではコメと一口でいっても、ジャポニカ系(主に東北産の日本米と同系統の単粒種)とインディカ系(タイ米など長粒種)があり、それぞれにブランド化されている点です。消費量はほぼ同量ですが、インディカ産は主に中国の南方産です。輸入量が多いのもこの品種です。

 私は長粒種の香りとさらさら感もスキですが、やはり、ご飯といえば単粒種です。かなりおいしい品種、日本のコシヒカリ系の色つやがよく粘り感がありやや甘みのある品種もありますが、末端価格は1キロ12元~13元、一般米の二倍以上はします。

 ところが、味という点になりますと、日本人独特の好みを基準としますと、やはり、まだまだというところです。では、日本人の好みはガラケー並みかというとそうでもなく、日本で食べたコシヒカリの味は、中国人も、やはりおいしいと喜んでくれます。

 おそらく、中国でも日本のコメのような味を求める動きが急速に進むと思われます。ご飯におかずを乗せたりかけたりすると、コメの味はきえてしまいます。余談ですが、日本の丼物、たとえば牛丼、かき揚げ丼など、汁物が混ざった丼物に使われるコメは古米、古古米が多いと聞きます。コメの味よりも肉とか天ぷらとかの味の方が勝ってしまいますから。高級丼物、たとえばうな重などは、コメもおいしいですよね。なぜかというと、うな重とコメは味のハーモニーを奏でますので、片方がまずいと全体が台無しです。

 中国本来の料理に丼物は多分無いと思いますが、店物ですと、最近は日本風の丼飯は大流行です。習慣的に白いご飯の上におかずを乗せて、両方を混ぜながら香りを嗅ぎながら、箸で喉に送り込む食べ方もありますが・・・・・。

 おいしいコメの味嗜好が広がっていくと、コメのブランド化と価格の多層化は一層進み、おいしいコメを作る農家の所得が上がる日本のようになると、頑張った農家にとっては励みになるに違いありません。

 追伸:『無洗米』は日本の発明ですが、読んで字のごとく洗う面倒のないコメのことくらいはご存じでしょうが、その誕生秘話について、いずれお話ししましょう。