2013/04/12

「週刊文春」、中国の食品安全問題に一石

週間文春今週号、2013年4月18日号

中国の食品安全問題とH7N9問題を特集しています。私も取材に応じ、問題を提起、かなり多くの行数を割いてくれています。

2013/02/08

ルイスの転換点の罠

「ルイスの転換点」をまことしやかに議論する人たちが居るんですね。

中国も工業化が進み、農村から労働力が工業部門に移り、農村には労働力が枯渇する、と同時に、賃金水準が平準化、つまり、工業労賃と農業労賃が一緒の水準になるんだとさ。

もし、それが現実に起きるなら、農民にとって、こんなに歓迎すべきことはない。余剰労働が消え、所得が上がるのだから。

 でも、実際は、市場経済の社会では、絶対にこういうことは起きない。市場経済のもっとも進んだ欧米、あるいは日本でも、こんなことはあり得ないし、現に起きていない。学者という者の中には、暇学問が好きなひとがかならず居るんですね。
陥りやすい「ルイスの転換点の罠」なんでしょう。

欧米、日本の農業部門と工業部門の賃金格差は、けっして中国をとやかく言えるほど小さいわけではないんです。

2013/02/07

専業農民の急減、農外収入依存高まる

中国の専業農民が急減している。年齢構成別にみると、20~30歳代は一ケタ%も農業現場には残っていない。農業をするのは50歳以上となってしまった。そのかげで、大豆も米も小麦も等も鱗氏も輸入増加が止まらない。

こうしたなか、統計的には、農民の所得の源泉構成が大きく変化している。農業所得は伸び悩み、増えるのは出稼ぎ、農外就労、仕送りだ。

ほんとうに皮肉なことだけど、そのためか、農民間の所得格差は少しずつ縮小しているのである。

むしろ、専業農民の経営が苦しい。これは日本も同じこと。コスト計算などに縁がない兼業農民が、市況と無関係に作る農作物が大量に市場に流れ込むために、農民の手取り価格はどんどん下がる。価格決定権はいまや兼業農民にあり、専業農民はたまったものではない。この点も、日本も同じこと。
中国では、このところ、農産物消費者価格が高騰しているが、農民には無縁だ。なぜか?川下の最後の1kmの業者が、その大部分を取っているからである。

2013/01/09

農産物価格急騰中の中国




中国(全国)の農産物卸売市場価格が図のように、今年に入って急騰の気配を強めています。
冬になると、農産物価格が上がることは例年のことですが、今年は、とくに激しいようです。

そのわけは、気温の低さからくる野菜などの出荷減、家畜飼料価格の上昇。とくに、豚肉、牛肉、羊肉の上昇が目立ちます。
野菜は、ビニールハウス栽培が普及しているので、生産が落ちることはあまりないとみていましたが、今年はやや特別のようです。

今年の春雪は2月10日ですが、これから一気に上げ足を強める可能性が大でしょう。

2012/12/08

農業保険の制度化はじまる

このほど、国務院は「農業保険条例」を公布、来年3月から、農産物、農業施設などを対象に、農業保険制度を始めることにした。

ながいあいだの、課題であったが漸く、実現にむかって歩みだした。

いま、中国には「中国保険法」はあるが、農業保険は事実上存在しなかった。保険機構が保険者となり、農民が契約者および被保険者となる。

保険料、保険金額、期間など、仔細は今後明らかになると思う。

農民の負担と保証がどのていどになるのか、まだ不確定要素が多いが一歩前進といえる。

2012/12/01

習近平が住んでいたというヤトトン

習近平が陝西省で住んでいたというヤトトンとは、右の二枚の写真のうち、下にある形式のものです。内部は、きれいなものです。
ヤオトンに住んでいたというと、なにか、貧困生活をしていたかのような、むらびとの暮らしがわかるかのような解説が目立ち、それが習近平の体験の人間的な側面を強調するのに役立っているようだが、実態は少々ちがう。貧困生活者はこのようなヤオトンには住めず、上の写真の方に住むのである。
いずれも筆者が現地で撮った写真である。この二つでは、内部のレイアオウトも綺麗さもまったく異なる。陝西省は甘粛省などでは、昔はみな、こんな暮らしをしていたのであって、特別なことではない。

中国農民のローエンド自動車保有の増加

私の統計的な分析では、年間実所得が15,000元(200,000円程度)になると、農民の10%が自動車を持つようになる。
日本では、平均月収300,000円になったとたん、50%が車をもつようになった。それは1978年ころのことであった。
中国の都市住民の場合、50%の保有率になる層は年間実所得が58,000元(750,000程度)である。
いま、中国には1億台を超える自動車が走っている。そのうち、わずか700万台が農民所有である。

しかし、いま、農村をわかせているのは、300,000円程度の電池自動車だ。この程度だと、買える農民層も少なくない。この手のローカル・ローエンド車をつくるメーカーは、私の資料調査では、中国に200社はある。
この調子で、農民の車所有はどんどん増える構図ができつつある。

2012/11/27

中国・・・農地の資本化 と師匠

「農地の資本化」という議論がだんだんと多くなってきた。専門の研究書もかなり出ている。これにはさまざまな形がある。
ひとつ、農地の農外転用、たとえば工業用地や商業用地に変える。農民は、地代収入を得る。事実上、離農となる。
ひとつ、農業の企業化。これも企業に農地を提供する。本人は雇われ作業農民となるか、リタイア。

農業土地問題は経済学のなかで、もっとも重厚かつ品格ある議論の場である。なんといっても経済学は、農業経済学が嚆矢なのです。
私の師匠(複数)は、この農地問題で悪戦苦闘した方々だ。お一人はすでに旅たった。あとのお二人は健在であり、先日、そのうちのお一人が書いた随筆を読んだ。この方の頭脳は年齢を知らないかのようだ。私の師でもあり、この方の友人でもある方の死を悼む内容だが、書いてあることは経済学だった。文章がすごく明晰でもあった。

その随筆を乗せた小栞はある出版社の社長の趣味兼宣伝物だが、この社長ときたら、これまた尋常ならざる達文家。骨のある編集者兼経営者である。一冊、拙著も出させていただいたことがある。また、お願いしようかなあという気も少し湧いてきた。

「農地の資本化」から話題がずれたが、私のなかで、根っこはつながっている。農地と資本ということばを聞くと、使うと、厳しかった修練の時代を思い起こすのである。師はありがたきかな・・・・

2012/11/20

中国の労働分配率の低さの異常さ

 一般に労働分配率はある年、ある期間の労働者報酬を粗国内総生産(国内総生産+減価償却費)で割って計ります。日本や欧米は60~70%です。

 ところが中国は非常に低いのです。ある人は40%程度と言っています。でも、実際はもっと低いだろうと思います。中国の都市勤労者の労働生産分配率を計る際に留意すべきは、GDPから第一次産業部門のGDPを差し引く必要があることです。というのは、中国統計の労働者報酬は農民の所得が控除されたものだからです。そうして、計算してみてください。とても低い結果になります。

 なぜでしょうか?中国においてはGDPが多い割に、普通の庶民の生活が苦しいのはなぜなのでしょうか?ちゃんとした理由があります。

 一方、農民の労働分配率は?その答えは、原則的には100%です。農民以外に農民の所得を分け取る者は、いないことになっているからです。所得税もなしですから、農民は付加価値のすべてを自分の財布にいれることができます。 

 でも、これは計算の約束事のうえでのはなしで、実際は、肥料業者や種業者や農薬業者や運送業者や市場関係者などなどが自分に帰属する付加価値として、すでに、とれるだけとったあとに残った付加価値を得ているにすぎません。この最後に残った農民の付加価値がGDPの三次産業分割のうち第一次部門に計上されいているものに該当します。ですから、農民の労働分配率は100%になるのです。でも、これは一種のトリックと言ってもいいでしょう。アグリカルチュラル・エコノミック・トリックス です。

2012/11/17

新指導者層、色分けの無意味

習近平を頂点とする共産党の新指導部、政治局常務委員7人の顔ぶれを、どの新聞も、テレビも学者、評論家もみな、口をそろえて、7人の「派」をいかにも重大そうに扱い、自説を述べている。

いわく、太子党(親の七光り)、上海派閥(江沢民:対日強硬派)、共青団派(胡錦濤:対日少しは柔軟派)。これすべて、日本人基準の分け方である。対日強弱で分けるのが基本となっている。

権力闘争の結果、決まった人事であることは常識である。しかし、対日政策の違いが基準となって決まったわけではない。この辺が見落とされている。別の基準であり、それは、一言では言い尽くすことのできない、魑魅魍魎の世界がうごめきったところで決まったものである。

だから、日本人が好む、派わけは無意味に等しいのである。

つまり、いまの日中関係ならば、だれが総書記になろうが、対日政策は同じなのである。習だから厳しいわけではない。

しかし、徐々に和らいでいくことも必定。中国経済がいかに、日本に依存しているか、少しずつ分かったきたのだ。計画経済を捨てた中国経済、原動力は市場原理です。そこには、効率と質、新しい技術を見分ける鋭利な目が監視役となっているのであり、共産主義の頑固者はやがて退場していく道理があるのである。

2012/11/16

広がる変化のきざし

 中国で、現地のひとと話していて、最近、おやっと思うことがよくある。
それは、農民もそうでない人も、我慢というものがそろそろ限界に近づいてきたのではないか、という感覚である。

 そして、「われわれもばかではないよ」という、喉の底からはじけてきたような言葉。わかっているのである。

 この変化のきざしは、こんご、どうなっていくのだろうか、と思わずにおれない。

今回の共産党政治局常務委員の顔ぶれに、中国の友は、なにか希望を感じ取れただろうか。

2012/10/15

中国、山東省浜州市沾化県の冬なつめは大きい

 10月7日の週、山東省浜州市沾化県で撮影した名産、冬棗です。10円玉と比べると、その大きさがお分かりでしょう。
 でも、こんなに大きなものはめったになく、この3分の2程度の大きさが普通です。
味は、本当においしい。カリッとした噛みごごち、口いっぱいに広がるジューシイな甘さとほのかな香り・・・・・・。畑で一日50個はもぎ取って食べました。一個にはレモン40個分のビタミンCが含まれ、健康にもいい沾化の冬棗。日本には、残念ながらありません。輸入もされてません。柿、ミカン、リンゴと競合するので、お役所は輸入を認めていないのでしょう。でも味も香りも、まったく別物で、日本の消費者が食べると、きっと随喜の涙を流すに違いありません。

2012/09/18

日中関係変化の「構造的変容」が起きている

日本政府は尖閣についての領土問題は存在しない、との立場を堅持している。自分の所有物について「オレのものだ」と主張し実力行使に出ようとする者がいる、としよう。

こんな場合、黙っているだけで済むだろうか?普通は、こういうだろう。「なにをいうのか、これは私のものだ」といって反駁するのが普通だ。ところが、いまの日本政府の尖閣問題に対する姿勢は、そうではない。ただ、黙っているだけである。

こういうべきではないか。「自分のものだという根拠はこうだ」。相手は、言い返す。「それはまちがいだ。歴史の姑息な歪曲であって、真実はこうだ」と。

こうして、やっと解決に向けた話しが始まる。話し合いは間違いなく硬直するだろうね。

そこで、「第三者の判断に任せましょ」といえばいいのだ。第三者とは、国際司法裁判所のことだ。

これ以外、尖閣をめぐる日中関係の軟化のための方法はない。

日中関係は変化の連続だが、単なる過去からの連続のうえにある変化ではない。変化をもたらす要因が構造的に変化しているのだ。

写真は、中国農村で大人気の、稲刈りに不可欠の日本製コンバイン。(筆者撮影)

2012/09/06

中国では開けませんでした。このブログ

中国へ行って、ブログを更新しようとしたところ、このブログは開けないことがわかりました。

中国国家の都合の悪いことは書いていませんから不思議です。

この程度のブログまで閉鎖するとはなさけなや・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

”日本一柔らかい中国経済のはなし”

中日新聞プラスで、”日本一柔らかい中国経済のはなし” という連載ブログを持ちました。

「中国経済」と聴くと、途端に顔がこわばる人、はなから難しい、硬い、だめだ、と思ってしまう方へこそ送ります。
優しい解説です、それでいて、自分でいうのも気が引けますが、そのつど、とっても高度なテーマなのです。

月に2~3度のペースで書きますので、読んでみてください。


http://chuplus.jp/blog/list.php?category_id=225&pl=5645262277

2012/07/29

中国の経済成長率、大幅な落ち込みも

今年上半期の統計を見て思うことは、このまま推移すると、中国の2012年のGDP成長率は7%を下回る可能性すら出てきた。

改革開放以来、成長率が7%を下回った年は三度あるが、1991年以降は一度もない。

中国のGDPの伸びを支えてきたのは、工業生産、輸出、固定資産投資、消費である。いま、そのいずれもが、伸びが鈍化しているか前年比マイナスだ。とくに大企業の売り上げと利潤の低下ははなはだしい。

この流れはEU・アメリカの景気悪化から来ているので、容易に止められないが、対策は公共投資以外にない点が悩みである。しかし、公共投資とは一口で言っても、道路、港湾、空港、橋、公園・・・どこへ行っても過剰なくらい立派になった。投資乗数自体が低下しているので、効果も限られる。

そこで、出番は農業投資。灌漑、浄水場、トイレの水洗化などの水投資、土壌改良、農地基盤整備、農村住宅の近代化などなどである。農村はまだまだ、投資先として有望だ。

2012/07/19

日中韓FTA賛成、TPPに反対

日中韓FTAには賛成だけども、TPPには反対だという意見が多い。これは大きな矛盾なんですね。なぜなら、2010年の11月、横浜で開催されたAPEC。この会議で、加盟各国は「横浜ビジョン」を発表した。ポイントは、APECのFTAを作ろうというもので、日本は主催者として提起し、加盟すべての国が賛同したものだ。

 
 
  ASEAN+3(日中韓)もTPPも、最後にはAPECのFTA、つまりFTAAPに収れんすることに賛同したのだ。日中韓FTAには賛成だけれども、TPPには反対だというのは、だから矛盾することなのである。

2012/06/10

データと格闘

昨日、今日と机に座りっぱなしでした。休憩のため、夕方の今、ビールを飲んだところです。

8月、北京で開かれる国際学会で発表するためのデータ作りです。課題は、ASEAN+3とTPPの比較。農産物を主とする主要品目の時系列貿易、投資のデータ整理と、そのグラフ化。図表だけで50を超え、実際の選別・利用の方法を思案。
使うソースは、UNCTAD,IMF,ILO,UNATATなどなど。そのために、パソコンは2台使っています。
1台は、データ収集、もう一台は集めたデータをエクセルですぐに整理するため。

うち1台のキーボードは、アルファベットの文字が消えかかっています。

いま、私は「日中経済関係変化の構造的変容」をテーマとして、農業・食料問題に視点を当て
て取り組んでいるところです。

自分への願いは、病気になるな、ということだけです。

蒼山県の大規模開発のその後

読者から、拙著で紹介した中国山東省の蒼山県ではじめられた大規模農業開発はその後どうなったか、という質問を受けました。
もしこのブログを読んで頂いたなら、まず、私の本も読んでくれたことに感謝申し上げます。
実は、まだその後の経過を調べていません。気になって仕方がないのですが、そのままフォローしていないのです。
山東省へはよく行くのですが、機会がありませんでした。
いつか、自分の目で確かめたいと思います。

2012/06/07

中国の高利貸し

今日の中日文化センターの講座は中国の二元金融の現状。政府公認の正規金融と非公認の非正規金融。正規金融の資金余剰額は日本円で350兆円。預金のうち貸付されずに金融機関の手元に残った、いわば余りである。資金需要を満たしてあまるのならまだしも、一方では、年利数10%の高利貸しが跋扈している。

しかも、江蘇省のある郷では住民の30%が高利貸しから借りている例からもうかがわれるうように、高利貸し金融は、正規金融の貸付額の半分に達するという見方もある。

共産党政権は高利貸しを禁止しているが、これは表向きのことで、経営者には政府役人も多数という声もある。昔から「9出13帰」というのが中国式高利貸しのやり方。10000元借りた場合、手取りは9000元、返済日には1万3000元返す仕組みのことだ。

資金過剰のなかの資金不足は矛盾であるが、これが是正される見込みはない。庶民や農民には担保価値のある資産がないからだ。正規金融機関は相手にもしない。
だから、高利貸しは生き続け、太り続ける。

”最後の1km” の経費

中国の農民が野菜を出荷する際の価格と消費者価格との間には3~4倍以上の開きがある。いま、消費者価格は1キロ、大体3~4元。農家が出荷する際に手にする価格が1元程度。
こんなに大きな開きがあるわけは、輸送距離(1,000キロは普通)、輸送運賃、消費市場経費、代理商、ブローカー、小売店のマージンなど流通業者の取り分がかさむからである。

なかでも、”最後の1km”の経費が中国で問題になっている。これは、消費地市場から末端消費者の手にわたるまでの距離のことだ。そのなかでも、最大のコストがかかるのが消費市場経費。入場料(1回数百元)、販売ブース賃貸料(年7,000元)、冷蔵庫代、人件費、水道光熱費などなど。消費者が支払う価格の60~70%は”最後の1km”のためだという。

こうした流通経費の節約は大きな課題である。

2012/06/02

農産物輸出協議会失敗の原因

農民同士の交流があるといいと思う。日中農業交流というと、団体間交流、にわか親善組織間交流、政治家間交流が一般的で、本当の、普通の農民レベルの交流は皆無といってよい。
現状は、それができない。農民同士は互いに関心がないし、中国の普通の農民は日本へ経済的理由や招聘上の問題から事実上渡航ができない。日本の普通の農民は、自力では会いたい農民にたどり着くことができない。
こうした制限が、庶民レベルの日中間の相互理解を隔てている壁の一つなのだ。
いま問題の中国へ農産物輸出をしようと各界が疑惑の中国人と一緒に作った団体の失敗も、相手の実情を無視して、欲の皮が突っ張った自称中国通の学者やジャーナリストの話に騙されて日本の農産物を売ることしか頭にない偏狂な組織の思惑が先行した結果だ。

円と元の直接取引はじまる/中国の円買い

‎6月1日、円と人民元の直接取引が始まった。相場は、ドル介在水準とほぼ同じなのは当然としても、直接取引相場の登場は歴史的な意義を持つことである。私は、人民元が早急に完全な国際化を果たすべきだと思っているので、今回の出来事はその動きをさらに一歩強める働きをすると期待したい。
世界第二位の経済規模を持つ中国の人民元がはやく独り立ちすることが、円に逃げてくる国際通貨市場の動き(円への逃げ相場)を緩め、過剰な円高を抑制する働きを担うことに通ずるのである。

現在人民元は管理変動相場制という固定相場制と変動相場制の中間的な仕組みを採用しており、一日当たりの変動幅を上下3%に制限している。また、詳しくは報道されないが元売りドル買介入を頻繁に行い、元・ドル相場の安定に苦心している。
私は、円高進行の大きな要因の一つに、国際外為市場における中国政府による巨額の円買い介入が暗躍しているとみている。
今回の円と元の直接取引の開始は、この動きを容易にする仕組みの登場という一面もあることに留意すべきである。もっとも、実際の円買いをだれがどこで、行っているか闇なので、いまのままでも円買いを思いのまま進めることができる。なにせ、中国には3兆ドル以上の外貨があるのだから。

2012/05/31

2030年の中国中間層-80~85%に達する?-

先日、EUの研究機関が北京で開催したシンポジュームで、2030年になると中国の中間層は80~85%に達するというレポートをして評判を呼んでいる。あと18年後のことだ。

私は、これは大嘘だと思う。まったく納得できる分析がないままの誇大妄想だ。こんな予測をする者たちに言いたい。「方々で農村調査をしてみなさい」と。

根拠の乏しいことにかけては、日本の自称中国通にも当てはまるところがある。2009年に出した拙著(朝日新聞出版)に、北京のある機関の事務所長をしているという人物が、いかにも知ったかぶりをして、批判文を、こともあろうに人民日報に投稿した。私は、自分の目と鼻と掌で確かめたこと以外は書かないたちである。この批判を私は無視したが、この人物と同じ知ったかぶり屋が書いたとしか思えないこのレポートが、いまの時期に公にされたことに、なんらかの不純な背景を感じる私はうがちすぎだろうか?

2012/05/23

ある中国の村にて―2012年5月-


中国、金の回り方が変わるとき

加々美氏の主張は次である。
中国政治はきわめて逼迫した情勢にあり、次期政権以後、早い時期に崩壊する可能性がある。薄煕来事件はその前兆としてみることができる。しかし、5月21日のNHK「クローズアップ現代」で解説した興梠氏が言うような、左遷に対する怨念として、重慶で薄煕来は毛沢東主義の礼賛をしたわけではなく、もっと構造的な危機にもとづく行動であったのだ、という。私も興梠氏の見方は浅く、説得力に欠けるという点では一致した。
また、加々美氏はいわく、広東省の烏坎(うかんで起きた農民の反乱は全国的に波及していく、と。

しかし、私と加々美氏の異なる点は、私は農村の民が怒ったのは村幹部の不正を怒ったのにはちがいないが、その怒りは正義心からではなく、村人への分け前分配のなさを怒ったのだという点である。だからといって、農民を批判することはできまい。

加々美氏は人柄がよく、私のようにワルではないのだ、と思う。

中国農村では、ようやく基層幹部がうまみの分配に預かるようになり、これから、すでにその段階を迎えている大都市近郊農村を除く辺鄙な鎮や区、郷、そしてその下の村段階に、そのうまみの分配がやっと、広範に降りていく段階に至った。
十分に「生血」を吸って、腹が生血でパンパンに膨らんだ蚊のような満足感が末端まで広がらない限り、現体制の基盤は揺るがない。
しかし、その後、分配の余力が消えていく。つまり、GDPの伸び率が落ちるのだ。そして、その中身はサービス産業化するから、金の回り方が決定的に異なったものになる。つまり、金回りはそれでおしまいとなり、農民には最後まで行き渡ることはない。それが分かった段階で、やっと農民の怒りは抑えようのないものになるのだ。

加々美氏との対話

昨日、久しぶりに、学校で加々美氏と会った。学生が行き交う校内の廊下で、「たかはしさーーん」と呼ぶやや甲高い声が2,3回したので後ろを振り返ると、ナップサックの紐を羽交い絞め式に身体に巻きつけた加々美氏が笑顔で歩いてきた。
足取りは確かで、話し方や笑顔にも健康が戻っていた。笑顔で応えた私は、一階の食堂に誘い、コンビニで買ったアイスコーヒーを飲みながら、話しが弾んで90分も話し込んだ。
話題は中国の政治情勢(加々美)と農村の民の話し(私)だった。
微妙な違いはあるが、おおまかなところでは意見の一致をみた。
  
話しの具体的な内容は、明日からの中国出張から帰った後にしたい。これから午後の授業が始まるので。

2012/05/21

なぜ、私はTPPに賛成なのか

TPPに賛成である。

「TPPは農業・農民をつぶす」と、のどを嗄らして叫んでいる反対派の中に、実は農業と農民をつぶす役割を演じている者がある。
私はいつでも、どこでも農民の味方でいたい。どこでも、というのは、日本、中国、東南アジア、どこでも区別はない。
農業と農民をつぶす者は、市街地のなんと真新しい立派なビルに住んでいることか。この点は、日中共通である。日本も中国も農業所得だけで生活していける農民は、ほんの一握りだということも共通。そして、高齢化の甚だしさも共通している。


中国の農民は怒っているか?

中国農民のことを聞かれることがある。

○曰く、彼らは生活に満足しているのか?
○全土的な農民の反政府暴動は起きるのか?
○若者は村に残っているのか?
○貧富の差が拡大しているのに、農民に跡継ぎはいるのか?

 私の答えは、すべて NO だ。 
 2番目の質問に対する答えには「ただし」が付く。
 ただし、経済成長率が5%の線を超えたとき、農民と都市の半失業労働者はもはや、おとなしくできない可能性が極めて高い。 

2012/05/20

今春のゼミ生の就活は順調

私には4年生のゼミ生が19人いる。学部では多い方である。いま彼らは就活に忙しいが、今年は昨年以上に順調に内定をいただく傾向が強い。学生によっては大企業の内定を3つももらい、うれしい悲鳴をあげる者もいる。早々、内定先が決まり、ゼミでは卒業研究に専念したり、はやくも夏休みの計画を立てたりと、忙しいが指導教員としては、残る学生生活を楽しんでほしいし勉強もしてほしいという気持ちが強い。内定先は、大手物流企業、航空会社、自動車企業、家電メーカーなどなど。
 先日、大手企業で働くゼミ卒業生が、久しぶりに学校に姿をみせに来た。卒業して一年も経つと、やはり社会人の雰囲気が漂うが、私にとっては元ゼミ生である。職場の話しなども聞いたが、仕事を楽しんでいる様子に安心した次第である。

2012/05/18

日中関係の現状

日中関係の進展度を産・官・学・民の視角からみると、その順位は次のとおりであろう。
1、産=経済
2、民=人的交流(相互旅行を含む)
3、学=日中共同研究または中国研究、日本研究
4、官=政治・外交



2012/05/15

日中韓FTAとTPPに思う

年内の日中韓FTA交渉入りが合意されたが、おそらくは、TPPへの日本の参加がより確実にならなければ、この話は来年に持ち越しとなろう。中国は、三カ国FTAをTPPへの日本の参与度と天秤にかけながら進めるつもりだ。まずは韓国とのFTAを先行させ、その推移をみながら日本との交渉に臨む姿勢である。この点は、韓国も同様であり、場合により日本は仲間外れに会う可能性も否定できない。
 そこで重要となることは、日本のTPPに対する関わり方だ。私は、TPP参加が今後の日本にとって極めて重要な選択だと思っている。国際社会のなかで日本が選択できることは昨今減っているが、TPPは久しぶりに、日本が主体的に選択肢に直面する課題である。
 日本はTPP交渉で主導的な役割を担い、そして日中韓FTAやASEAN+3においても重要な位置を占め、発言権を強めるべきである。

2012/05/07

産学連携

明日から、ある企業の方々と一緒に中国出張です。いわゆる産学連携ですが、向こうでは地方政府と合作するので、産官学連携となるでしょうか。中国では、官学産と立ち位置がやや異なります。企業との連携事業でもっとも大事で難しいことは、学問的専門性に企業的センスや実務的感覚を織り交ぜることです。

2012/02/12

中国はバブルではない、、たんなる誤りの連鎖だ

中国の著名な経済学者には、中国経済は住宅バブルからソフトランディングしたとの見方が多いが、そもそも、それがバブル経済といえたかどうかというと、筆者の見方はかなり異なる。日本のバブルは、カラ需要が供給をせかせ価格高騰を招いたが、中国の場合まだまだ実体の供給は絶対的な不足状態である。たとえば、都市部には住宅を持たない農民工だけでも1億5千人いる。かりにかれらが都市に定住するとなれば、少なく見積もっても1億戸の住宅が必要である。では、バブルに見える現象はなんなのか?答えは、経済権力と政治権力の一体化にもとづく富の分配の極端な偏り、まちがった税政策、まちがった市場経済依存にある。
なによりも、長期的な視点から、経済権力を政治権力から引きはがす仕組みが必要で、引き続き、次期習政権最大の政策試練である。

2012/02/11

中国と日本の貿易収支、注目すべき最近の動き

中国の公式統計をみると、輸出と輸入が減少傾向にある。加工型輸出依存経済だから輸出が減れば輸入も減るのは当然のことである。あきらかに、EU経済の低迷を受けてのことだ。では、今後はどうなるか?答えはEU経済次第である。ではEU経済はどうなるか?ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガルに加え、いくつかの国が影響を受けているので、全体の回復にはやや時間がかかる見通しだ。一方のアメリカ経済は一進一退で、中国にとっては年3000億ドルの黒字国だ。影響は大きい。やはり、回復にはしばらくかかりそうだ。こうみると、中国経済は曲がり角にきていることは間違いない。
日本の貿易収支は赤字に転じたが、傾向的には予想されたことである。所得収支は貿易収支の赤字を埋める巨大さはますます進むから、経常収支が赤字になることはない。しかも貿易収支自体も、間もなく好転する可能性が高い。あまり悲観することはない。

2012/02/08

イチゴ農家の加藤くんのもぎ取りイチゴハウス

きれいなイチゴハウスです。一宮のイチゴ農家、加藤くんの経営する刈取りイチゴ園の内部です。高さが1メートルくらいあるので、歩きながら新鮮なイチゴを手で取って食べることができます。イチゴの香りがいい、味もいい。

2012/01/16

中華料理はおいしいのだが・・・・

現地で食べる中華料理はとてもおいしくて、いつも食べすぎる。短期間の旅行でも、帰りの飛行機のなかで、やはり太ったと感じるのが常である。
でも、最近、気になることがある。それは、なんでもおいしいのだが、食材がなんであれ、なんでも同じ味がするということだ。ある店で中華料理の数々を食べたとする。おいしいのである。だが、口の中に残る食後感というか、あと味というか、一本調子なのである。
なぜなのだろう。いま、その原因をさがしているのだが・・・・・

2012/01/09

New york Times 日本の回復を書く

今朝のNewyork Times web版 World ブロック、「日本失敗の神話」と題する署名論文記事を掲載。久しぶりに、日本の記事なので読んでみた。失われた10年、そこから回復して、通信インフラの高さ、失業率の低さ、平均寿命の延長、国際収支の安定など肯定的な側面を強調。アメリカより優れた面を紹介。アメリカの現状が急速な悪化をしていることを憂うあまり、日本への羨望となっているのかもしれない。アメリカ人心理の反映であろうか。わが日本を振り返り、いいところを再認識すべきかな、という気にもなる記事である。 http://www.nytimes.com/2012/01/08/opinion/sunday/the-true-story-of-japans-economic-success.html?pagewanted=1&_r=1&ref=asia
www.nytimes.com
Instead of feeling sorry for Japan, the United States should look to it as a model for economic recovery.

2012/01/01

日本帰化の留学生セミ生のこと

ゼミ生だった中国人留学生がいます。彼は修士終了後、私の紹介で、中国ビジネスを行うある企業に就職。それから7年、年賀状で日本に帰化した知らせを受けました。まじめな有能な学生でした。月並みだけど、これからの彼の人生に幸多かれと祈るばかりです。

2011/12/28

加藤君、上海で撮った写真。わざわざ鋼材置き場へ行ってもらいました。

イチゴ農家の加藤くん

イチゴ農家の加藤くん。また上海で頑張ってきたようだ。
まったく、この国の農政はどうなっているのだろう。今度の農業関連予算の作り方、何の工夫のかけらもない。これで消費税?呆れて、ものもいえない。100万円でもいいから、加藤くんに回してくれ、と叫びたいのである。