2020/09/19

『中国農村土地私有化論の研究』 という本を出版します・・・・

 国家統計局によると、今年9月上旬の前年同期比の農産物卸売市場価格はコメ、小麦、トウモロコシ、大豆、落花生とも大幅に上昇したということです。

 コメ4.5%、小麦5.8%、トウモロコシ16.3%、大豆17.9%、落花生15.4%と、穀物ごとには差があるものの、全般的には急上昇中の模様です。

 穀物ではないが、豚肉は30.3%と上昇率は飛びぬけています。

 コメの場合、政府買い入れ価格は前年をやや下回ったにも拘わらず市場価格は上昇したことを見ると、政府にはこのような上昇気配は見えていなかったことになるのではないでしょうか。

 これら農畜産物の市場価格の上昇の背景には、南方の豪雨の停滞、新型コロナウイルスの影響(ベトナム、ミャンマーなどコメ生産国やカザフスタンなど小麦生産国の輸出禁止などの広がり)、中米経済戦争のあおり(大豆・豚肉)を受けた輸入量の減少や国内生産の落ち込み(豚肉は、輸入減少も響いている)など大きな原因が一度に起きていることがあります。

 今年の早稲作付面積が増えた理由として、前回は政府の見方をいくつか挙げました。

確かにこれらはその通りなのですが、実際は、政府が挙げたことすべてではありません。

 私は、政府は農業の今後に深刻な不安を抱き始めたのではないか、と見ています。耕地面積はほとんどの農産物で減少傾向にありますが、その背景には、農民の農業離れといっていい、農民の全般的な農業忌避現象が起きている可能性があることに、政府は漸く気づきつつあるのではないか、と思うのです。

 いま見たように、農産物価格は上昇しており、さぞかし農民も喜んでいることでしょう、

などと思ってはいけません。農民は肥料・農薬・機械作業費などを中心とする生産資材価格の上昇が止まず、他方、中間流通業者からは安い値段で買いたたかれ、手取りはほんとに少ないのです。農民にとって、コメ500グラムの値段は、水500グラムの値段より安いといわれるような事態は完全には消えていません。

 私は日本評論社から、10月に、『中国土地私有化論の研究』と題する著書を上梓します。とても厚くなり、420ページにもなってしまいました。

 

私にとって、一人で書いたこれほど厚い本を出すのは人生初めてのことで、同時に最後のことになるでしょう。実は、これでも文字数は抑えたつもりなのです。以前、出版社で編集作業をして定年で辞めた家人は、人の苦労と気持ちを微塵も理解する様子も見せず「そんなに厚い本、だれも読まないよ」と揶揄していますが、厚くなったものは仕方ありません。日本評論社の編集ご担当者は、実に仔細に見て下さり、文字、言い回し、事実確認、章構成、表紙デザイン、あらゆることに親身に対応して下さいました。

 本のタイトルの通り、この本は、中国農民と土地の関係に焦点を当て、徐々に進むその距離の広がりに歯止めをかけることを念頭に、「コモンズの悲劇(共有地の悲劇)」(ハーディン)を横目でみながら、“土地を農民の手に“をモチーフにした中国土地制度改革論のような性格を与えたものです。

 私の目からみると、中国革命は農地を農民の手に渡すことが大義名分であり、農民が望んだことでことでもあり、それゆえの革命の成功でした。ところが、数年後、その期待は裏切られ、農民の農地は手から離れていったのでした。今日まで、農地は農民の手からますます離れてしまっています。

 化学肥料と強い農薬で土は衰え、本来の生命力を徐々に失い、植物工場の培地、ロック―ルのように固く無味乾燥なものに変わった農地も増えています。この状態はいかにしたら解決できるのでしょうか?

 おまけに、pHが7~8というアルカリ性土壌が多く、もともと易しい農業ではありません。自分の手から離れていく農地、耕作が難しい農地、食料の安定的な確保のためには、土地制度はどうあるべきなのでしょうか?

0 件のコメント: