2021/12/10

中国農村家庭は大きく変容しています

中国農村家庭は大きく変わりつつあります。改革開放(1978)から90年ころまで、農村家庭といえば、子供が分家したあとの老夫婦家庭、結婚して独立した若夫婦と子供の家庭、このような核家族が大部分でした。

ところが独立した新家庭の青年夫婦が共稼ぎの形で、農民工として半年連続で、あるいはほぼ常住のような形で、都会で暮らすようになると、農村家庭の構造は一変します。

子供ができた若い夫婦は、夫あるいは妻のいずれかの老夫婦(普通は夫の方)に子供を預け、自分たちだけで都会暮らしをするようになったのです。すると、核家族は徐々に減っていきました。

こうして、形の上では三世代直系同居家庭の形ができてきたのです。「サンドイッチ家庭」などの呼び方もあるようになりました。

子供を農村に残して夫婦だけが都会に出る理由は、そこに本籍がないことには子供の教育、住環境、医療など日常生活に不可欠の行政サービスや仕事を期待通り受けられない面があるからです。子供が幼少の場合には、仕事のため十分な面倒をみれない不安もあります。

しかし医療や子供の教育環境、仕事面での待遇や社会保障が次第に改善され、本籍は農村に残したまま、夫婦と子供は実質的に都会に住むようになっています。

農村に残された老夫婦または独居老人が寂しそうに庭先に腰掛ける姿が見られます。彼らを指して「空き巣老人」などと呼ぶ人もいます。農村の集落の小路を歩くのが好きな私は、どこでも、そのような光景を目にしてきました。

このような農村家庭の変化は、さらにとどまるところを知らないかのようです。

一つは農村家庭の急激な減少です。ピークの2010年には2億6千万戸以上もあったのですが、いまは1億9千万戸、10年間で7千万戸も減少しました。これからも、この趨勢は簡単には止まらないことでしょう。

もう一つは離婚世帯の増加です。都市住民を含む全体の結婚件数は、2010年に1236万件(2472万人)あり、離婚件数は268万件でした。同年中の結婚件数を分母、離婚を分子におくとその比率は21.7%です。

ところが2019年のその比率は51.0%、ほぼ2倍に膨れ上がっています。地域別には、東北部がとくに高く70%を超える高さです。農村家庭の数字は詳しく調べないと分かりませんが、各種の情報を見る限り、おそらく都市住民以上に高いことでしょう。

農村家庭のこのような変化は農村の姿をも変えるでしょうし、農村の土地制度=土地の家庭請負制度の根幹をも脅かしつつあります。これは大変なことです。中国共産党の農村基盤にヒビを入れる可能性があるからです。

しかし、そこのところを察知するのが、さすが、中国政府は抜け目なく早いのです。

最近になって、農村の土地政策は大転換に近い変化を見せ始めたからです。その一つが資本制農業企業経営の農村参入の容認と促進、これら企業形態をもつ生産・加工・流通・販売などの産業集積をおこし、そこに、残った農民を就業させるという政策です。

すると、農地諸権利はこれまで以上に流動化し、その移動先が株式化など近代的な資本形態をとる資本制大規模農業企業・農業関連企業に集まる可能性を展望させます。

中国農業制度はイデオロギーから少しずつ離れ、現実的な再編や新方式の開拓に向かわざるを得ないのです。社会主義イデオロギーで現実を抑えたりコントロールできる時代の終わりの始まりの時代です。これはまさに、中国の喧伝する意味とは異なる「新時代」の到来です。







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