2025/05/08
中国の大豆価格の急騰はじまる!
2025/04/30
中国のアメリカ大豆輸入が半減
トランプの対中145%関税に対抗して、中国も対米関税を125%に引き上げたことはご存じのことでしょう。
その効果はさっそく、アメリカ大豆の激減となって、中国に現れ始めています。中国は、毎年、1億トンほどの大豆を輸入してきました。
輸入先はブラジル、アメリカなどで、アメリカの統計(FAS)によると、対中輸出は、2023年に2,640万トン、2024年には2,720万トンでした。
全輸入量の26~27%がアメリカから、ということになりますね。以前は、半分がアメリカでしたが、第一次トランプ政権の誕生による米中経済摩擦から、大きく減った経緯があります。
今回はさらに、大きな輸入減少が起きています!!!
中国海関総署統計の速報値によると、1月から3月までの大豆輸入量は前年同期にくらべてマイナス8%の1,711万トンにとどまったのです。
3月だけをみると、前年同月比でマイナス37%、マイナス350万トンと大きなマイナスを記録しています。
中国の海関総署の速報値は、国別の大豆貿易データがありません。
そこで、アメリカ農務省のFASを見ると、今年1-2月統計がありましたので、紹介しますね。
それによると、バイデン政権時の2024年この時期の対中の大豆輸出量は707万トンでした。ところが、今年は半減、328万トン、マイナス54%に落ち込んでしまっています。
アメリカからの輸入減少分は、なんとか、ブラジル、アルゼンチン、カナダからの輸入でやりくりして、アメリカからの輸入減をカバーしていそうです。
中国の大豆は、豆腐、醤油、大豆油などの原料、豚のエサで欠かせない大豆粕などの用途に供給されます。いまのところ、代替輸入先はなんとかなりそうですが、困っているのはアメリカの大豆農家ではないでしょうか。
日本は、大豆の自給率が10%程度ですので、アメリカ大豆農家とトランプ大統領にとっては、かっこうの穴埋め先と映るかもしれませんが、日本が輸入できるキャパは中国の10%以下、しかも輸入は確保しており、これ以上の受け入れは無理でしょう。
日本にとっては、とんだとばっちりです。
中国の大豆生産者には、国から10アール当たり、6000円程度、省や県によっては、これに数千円を上乗せした補助金を出すなど、国産奨励を進めていますから、国産化がさらに進む可能性もあります。
2025/04/15
農村詐欺の横行に効き目はあるのか:「緑剣護糧安」法
わたしの中国農村あるきの体験で見たもの、食べたもの、触れたもの、嗅いだもの、訊いたものは数知れません。
わたしの中国フィールドワークのモットーは、「五感で臨む」、というもので、農村では、つねに、自身の身体に付随するこれらの「道具」を意識して臨んできました。
そのなかから、かなりザックリのはなしではありますが、このことは、どこの農村でも変わらない感触でした。
それは、
中国の農民は従順で素朴、貧しくとも生きる喜びや幸福のありかを探し求める人生を送っている、というものです。なかには、どこで身につけたか、権力者のまねのようなふるまいをさらす者にも会わなかったわけではありませんが、そういうひとはごく少数のように思います。
そのような農民の世界に土足で侵入する不束者、詐欺を生業とする者の横行が、農村には絶えません。中国でも日本をまねたオレオレ詐欺が世間を騒がせる時代、農村はかっこうの餌食として狙われているようです。
では、詐欺師たちは、どんなことをするのでしょうか?
つまりは、次の違法物資を売り付けたり、違法行為をして金銭を詐取しているのです。
農業経営に不可欠な農業生産資材が、とくに狙われやすい物資です。
●種をまいても芽が出ない種子、
●安全性基準や禁止物質を無視した農薬、
●ぜんぜん効き目のない化学肥料や有機肥料、
●工業規格が無視されたトラクター、耕運機、田植え機、
●家畜用医薬品の偽造。
また、これらも違法に横行しています。これらは詐欺という言葉には当てはまりませんが、社会に対する違法行為であることには変わりありません。
●安全基準を無視した遺伝子組み換え食品、農産物、
●未検査家畜等の移送(中国では、家畜移送が耳標のない大型家畜は禁止、予防接
種のない家畜飼養は禁止)と、移送中の違法薬物の使用や投与。
●無許可屠畜場と死亡家畜の放置。
●家畜飼養業者の違法薬物、たとえば「痩肉精」(家畜の成長促進剤)の販売。
2024年、これらの農村に蔓延する行為を取り締まるうごきが、「緑剣護糧安」法に向けた政府の取り組みです。
「緑剣護糧安」というのは新語です。
「緑」はグリーン、エコ、環境保全などの意味合い。
「剣」は、厳しく、緩むことなくなど、政策にこめた心意気。
「護」はあとにつづく「糧」(食糧)と「安」(安全)すなわち食糧安全を守る。
これらからわたしなりに繫げると、「緑剣護糧安」の意味は「食糧確保を守るためのグリーン政策を厳格に遂行する」というようなことといえるでしょう。
以上は、2024年2月に農業農村部が出した「「緑剣護糧安」法執行行動の実施に関する通知」とか、2025年3月の「2025年の「緑剣護糧安」法の執行に関する通知」などには、その詳細な取組みの趣旨と内容を見ることができます。
2025/03/21
農業問題が、今年も共産党にとっては厄介な問題
共産党と政府が一年間に取り組む重要な施策をまとめ、宣言する文書が中央一号文件です。
「文件」とは、平たく言えば「文書」あるいは「施策説明書」のような意味を持つ、中国独特の言葉です。
さて、今年の中央一号文件は2025年2月23日の公表でした。今年も「三農」問題が中心でした。18回党大会以降、13年連続のことです。いかに、中国にとって農業問題が厄介な課題であり続けているかを象徴するもの、と言ってよいのでしょう。
というのは、政府財政の余裕がなくなってきており、中央と地方政府の連携なしには、制約が大きいからです。地方財政は赤字構造にありますので、中央が期待するほどの政策ができないことも予想されます。
2025/02/12
進む資本制大規模農業
中国は大規模農業経営の発展をめざして、奮闘中です。これには、5つの柱があります。
1,資本制企業がリードする。
2,AIスマート+大型機械化農業を展開する。
3,遺伝子組み換え農産物+ゲノム編集農産物を全面解禁する。
4,農業生産コストを下げる。
5,食料自給率を上げる。
1,中国農業のアキレス腱は規模が小さく、若者が減っているのが現状です。零細な経営規模を変えずに、労働集約的な農業が中心にしていたのでは、この先、食料の安定的確保はできないことに、政府は気づいています。そこで、頼りにするのが資本制農業です。もう、中国農業は社会主義の体面を気にしていてはどうにもならないことになっているのです。
すでに、各地で、資本制農業が浸透し、広がっています。これには中国鉄道集団など従来、農業には関心が薄かった異業種も参入し始めています。
2,スマート農業にはAIを組み込んだ完全自動化、GPSによる施肥・農薬散布、栽培管理・収穫予想などを進めています。これで農場の規模が大きいことが、さらにプラスになると見込んでいます。
3,遺伝子組み換えについて、拒否反応がまだ残っています。しかし、アメリカやブラジルから輸入する大豆や飼料はほとんどが遺伝子組み換え作物です。政府は、その事実を徐々に公開し、消費者の遺伝子組み換えアレルギーの希薄化を進めています。
あわせて、中国が得意なゲノム編集農産物が成長をしています。こちらについては、遺伝子組み換え農産物とはちがい安全なので、政府はなんの躊躇もありません。
コメ、トウモロコシ、大豆、小麦をはじめ、多くの農産物の遺伝子組み換えの生産をはじめ、商業化がすすめられ、昨年12月末、農業部が許可を出しました。
4,生産コストを下げることは、中国農業の喫緊の課題です。主要国でコストが高く、したがって国際競争力に劣る国の二番目が中国です。 一番目? もち、わが日本です。
いま中国農業は、旧い毛沢東型の何でもいい農家寄せ集め型農業から変貌しつつあるのです。まだまだ、改善すべきことは山ほどありそうですが、日本よりは早いスピードで近代化が進んでいます。ネックは、土地制度!!!! これもいずれは変わって行くでしょう。
5,中国の食料自給率は70%台に低下しています。国家発展改革委員会のある人も、そのくらいだと公言したようです。
わたしは、何もしなければ、これから、もっと低下すると見ています。遺伝子組み換えやゲノム編集食料に力を入れる理由は、ただひとつ、食料自給率をこれ以上下げない、できれば上げることにあります。
2025/01/01
進む農村の都市化、でも、その耕地はどこへ消えたのか?
先ごろ中国のあるデータ解析センターが発表したデータから、最近の省別の都市化率におおきな格差があることが分かります。ここでいう都市化率とは、地域ごとの人口に占める都市在住人口の割合のことを指しています。「都市」の定義が全国一定でも、その計測はまちまちのところが否めないことをご承知ください。
都市の定義ですが、「街道」の集合体、とするのが一般的です。街道とは、都市部(農村部以外)に設置された人口集中地区で、これを単位に「居民委員会」という日本の町内会のような組織があります。この居民委員会の会員が都市住民です。一種の自治組織のようなものですが、その地域に住む、ほぼ全員が会員になります。
しかし厳密にいうと曖昧なところがあるのです。それは、農村から都市部に出稼ぎに来て、なかば定住あるいは本格的な定住をしている農村戸籍を持つ人たち、彼らは実質的な都市住民といってもいいのですが、統計的にはカウントされません。
ということは、都市住民は表面的な数字より実際はもっと多く、したがって都市化率はもっと高い、と見ることもできます。以下の数字は、この部分がない数であることをご承知おきください。
ところで、一般に、都市化率は地域の非農業化を反映しますから、農民人口の縮小を意味します。農村から移住してくる人口がよほど大きくないかぎり、都市化率は上昇しません。
実際は、そういうことはまれですから、都市化率の上昇とは、農民人口の都市人口への社会移動が起きていることを意味しています。つまり農民の脱農民化=市民化、といわれる現象です。戸籍を農村から都市へ変更することですね。
さて、本題です。最近の全国平均の都市化率は65%程度といわれています。これを地域別に分解すると、都市化率が4つの直轄市を除く上位3位、1位江蘇省73.4%、2位浙江省77.2%、3位遼寧省72.1%。ものすごい都市化率です。
一方、都市化率が低い下位3位は、最下位チベット35.7%、下から2位雲南省50.1%、下から3位甘粛省52.2%と、大きな差があります。
さきほどの説明を当てはめると、都市化率が高い江蘇省、浙江省、遼寧省などでは農民をやめて都市住民になった人がとても多い、ということを意味しています。一方、チベット、雲南省、甘粛省などでは、そのような社会移動はとても少ない、ということになるでしょう。
ですから農民から市民になった人が多い地域では、残った農民の手に耕地が移動するはずなので一人当たり耕地面積は増え、そうでない地域ではあまり変わらないはずです。
そこで、これら地域の一人当たり耕地面積をみましょう。全国平均は5.1アールです。
都市化率の高い地域:江蘇省18.2アール、浙江省7.2アール、遼寧省43.7アール。
一方都市化率の低い地域:チベット18.9アール、雲南省22.9アール、甘粛省43.6アール。
このように、都市化率と一人当たり耕地面積との間には、かなり明瞭な逆の関係があること、すなわち都市化率が高い地域では1人当たり耕地面積が小さく、逆の場合は逆という関係があるといえます。
しかし本来は、さきほども言ったことですが、都市化率の高い地域では、よほどの面積の耕地から建設用地への地目転換でもないかぎり、一人当たり耕地面積は土地集中が進むはずですから大きくなるはずなのですが、これと逆のことが起きているのです。ただ都市化率の低い地域では一人当たり耕地面積が大きい現象がみられ、理論にかなっているといえます。
都市化率の高い地域で、1人当たり耕地面積が小さいのはなぜでしょうか?これは一時点のことですから、本来の動きを見るには、時系列的な少なくともデータの2点間変化を示すデータをつくる必要がありますので、逆のことが起きている、とは断定はできません。
断定はできませんが、なぜさきほどのようなことになっているのか、という点も検討する価値はあるでしょう。いまの段階ではそこまでしていませんが、次のことが予想はできます。
1,データが示すような都市化は、実際には起きていない。
2,都市住民になった農民の土地の移転登記が済んでいないか、その措置をしていない。
3,農業をやめて都市住民になった農民の耕地が耕作放棄地になったままである。
4,農業をやめた農民の耕地がほぼまるごと、都市用途に転換された。
ほかにも理由があるかもしれませんが、それには、どんなことが考えられるでしょうか?