2012/06/10

データと格闘

昨日、今日と机に座りっぱなしでした。休憩のため、夕方の今、ビールを飲んだところです。

8月、北京で開かれる国際学会で発表するためのデータ作りです。課題は、ASEAN+3とTPPの比較。農産物を主とする主要品目の時系列貿易、投資のデータ整理と、そのグラフ化。図表だけで50を超え、実際の選別・利用の方法を思案。
使うソースは、UNCTAD,IMF,ILO,UNATATなどなど。そのために、パソコンは2台使っています。
1台は、データ収集、もう一台は集めたデータをエクセルですぐに整理するため。

うち1台のキーボードは、アルファベットの文字が消えかかっています。

いま、私は「日中経済関係変化の構造的変容」をテーマとして、農業・食料問題に視点を当て
て取り組んでいるところです。

自分への願いは、病気になるな、ということだけです。

蒼山県の大規模開発のその後

読者から、拙著で紹介した中国山東省の蒼山県ではじめられた大規模農業開発はその後どうなったか、という質問を受けました。
もしこのブログを読んで頂いたなら、まず、私の本も読んでくれたことに感謝申し上げます。
実は、まだその後の経過を調べていません。気になって仕方がないのですが、そのままフォローしていないのです。
山東省へはよく行くのですが、機会がありませんでした。
いつか、自分の目で確かめたいと思います。

2012/06/07

中国の高利貸し

今日の中日文化センターの講座は中国の二元金融の現状。政府公認の正規金融と非公認の非正規金融。正規金融の資金余剰額は日本円で350兆円。預金のうち貸付されずに金融機関の手元に残った、いわば余りである。資金需要を満たしてあまるのならまだしも、一方では、年利数10%の高利貸しが跋扈している。

しかも、江蘇省のある郷では住民の30%が高利貸しから借りている例からもうかがわれるうように、高利貸し金融は、正規金融の貸付額の半分に達するという見方もある。

共産党政権は高利貸しを禁止しているが、これは表向きのことで、経営者には政府役人も多数という声もある。昔から「9出13帰」というのが中国式高利貸しのやり方。10000元借りた場合、手取りは9000元、返済日には1万3000元返す仕組みのことだ。

資金過剰のなかの資金不足は矛盾であるが、これが是正される見込みはない。庶民や農民には担保価値のある資産がないからだ。正規金融機関は相手にもしない。
だから、高利貸しは生き続け、太り続ける。

”最後の1km” の経費

中国の農民が野菜を出荷する際の価格と消費者価格との間には3~4倍以上の開きがある。いま、消費者価格は1キロ、大体3~4元。農家が出荷する際に手にする価格が1元程度。
こんなに大きな開きがあるわけは、輸送距離(1,000キロは普通)、輸送運賃、消費市場経費、代理商、ブローカー、小売店のマージンなど流通業者の取り分がかさむからである。

なかでも、”最後の1km”の経費が中国で問題になっている。これは、消費地市場から末端消費者の手にわたるまでの距離のことだ。そのなかでも、最大のコストがかかるのが消費市場経費。入場料(1回数百元)、販売ブース賃貸料(年7,000元)、冷蔵庫代、人件費、水道光熱費などなど。消費者が支払う価格の60~70%は”最後の1km”のためだという。

こうした流通経費の節約は大きな課題である。

2012/06/02

農産物輸出協議会失敗の原因

農民同士の交流があるといいと思う。日中農業交流というと、団体間交流、にわか親善組織間交流、政治家間交流が一般的で、本当の、普通の農民レベルの交流は皆無といってよい。
現状は、それができない。農民同士は互いに関心がないし、中国の普通の農民は日本へ経済的理由や招聘上の問題から事実上渡航ができない。日本の普通の農民は、自力では会いたい農民にたどり着くことができない。
こうした制限が、庶民レベルの日中間の相互理解を隔てている壁の一つなのだ。
いま問題の中国へ農産物輸出をしようと各界が疑惑の中国人と一緒に作った団体の失敗も、相手の実情を無視して、欲の皮が突っ張った自称中国通の学者やジャーナリストの話に騙されて日本の農産物を売ることしか頭にない偏狂な組織の思惑が先行した結果だ。

円と元の直接取引はじまる/中国の円買い

‎6月1日、円と人民元の直接取引が始まった。相場は、ドル介在水準とほぼ同じなのは当然としても、直接取引相場の登場は歴史的な意義を持つことである。私は、人民元が早急に完全な国際化を果たすべきだと思っているので、今回の出来事はその動きをさらに一歩強める働きをすると期待したい。
世界第二位の経済規模を持つ中国の人民元がはやく独り立ちすることが、円に逃げてくる国際通貨市場の動き(円への逃げ相場)を緩め、過剰な円高を抑制する働きを担うことに通ずるのである。

現在人民元は管理変動相場制という固定相場制と変動相場制の中間的な仕組みを採用しており、一日当たりの変動幅を上下3%に制限している。また、詳しくは報道されないが元売りドル買介入を頻繁に行い、元・ドル相場の安定に苦心している。
私は、円高進行の大きな要因の一つに、国際外為市場における中国政府による巨額の円買い介入が暗躍しているとみている。
今回の円と元の直接取引の開始は、この動きを容易にする仕組みの登場という一面もあることに留意すべきである。もっとも、実際の円買いをだれがどこで、行っているか闇なので、いまのままでも円買いを思いのまま進めることができる。なにせ、中国には3兆ドル以上の外貨があるのだから。

2012/05/31

2030年の中国中間層-80~85%に達する?-

先日、EUの研究機関が北京で開催したシンポジュームで、2030年になると中国の中間層は80~85%に達するというレポートをして評判を呼んでいる。あと18年後のことだ。

私は、これは大嘘だと思う。まったく納得できる分析がないままの誇大妄想だ。こんな予測をする者たちに言いたい。「方々で農村調査をしてみなさい」と。

根拠の乏しいことにかけては、日本の自称中国通にも当てはまるところがある。2009年に出した拙著(朝日新聞出版)に、北京のある機関の事務所長をしているという人物が、いかにも知ったかぶりをして、批判文を、こともあろうに人民日報に投稿した。私は、自分の目と鼻と掌で確かめたこと以外は書かないたちである。この批判を私は無視したが、この人物と同じ知ったかぶり屋が書いたとしか思えないこのレポートが、いまの時期に公にされたことに、なんらかの不純な背景を感じる私はうがちすぎだろうか?

2012/05/23

ある中国の村にて―2012年5月-


中国、金の回り方が変わるとき

加々美氏の主張は次である。
中国政治はきわめて逼迫した情勢にあり、次期政権以後、早い時期に崩壊する可能性がある。薄煕来事件はその前兆としてみることができる。しかし、5月21日のNHK「クローズアップ現代」で解説した興梠氏が言うような、左遷に対する怨念として、重慶で薄煕来は毛沢東主義の礼賛をしたわけではなく、もっと構造的な危機にもとづく行動であったのだ、という。私も興梠氏の見方は浅く、説得力に欠けるという点では一致した。
また、加々美氏はいわく、広東省の烏坎(うかんで起きた農民の反乱は全国的に波及していく、と。

しかし、私と加々美氏の異なる点は、私は農村の民が怒ったのは村幹部の不正を怒ったのにはちがいないが、その怒りは正義心からではなく、村人への分け前分配のなさを怒ったのだという点である。だからといって、農民を批判することはできまい。

加々美氏は人柄がよく、私のようにワルではないのだ、と思う。

中国農村では、ようやく基層幹部がうまみの分配に預かるようになり、これから、すでにその段階を迎えている大都市近郊農村を除く辺鄙な鎮や区、郷、そしてその下の村段階に、そのうまみの分配がやっと、広範に降りていく段階に至った。
十分に「生血」を吸って、腹が生血でパンパンに膨らんだ蚊のような満足感が末端まで広がらない限り、現体制の基盤は揺るがない。
しかし、その後、分配の余力が消えていく。つまり、GDPの伸び率が落ちるのだ。そして、その中身はサービス産業化するから、金の回り方が決定的に異なったものになる。つまり、金回りはそれでおしまいとなり、農民には最後まで行き渡ることはない。それが分かった段階で、やっと農民の怒りは抑えようのないものになるのだ。

加々美氏との対話

昨日、久しぶりに、学校で加々美氏と会った。学生が行き交う校内の廊下で、「たかはしさーーん」と呼ぶやや甲高い声が2,3回したので後ろを振り返ると、ナップサックの紐を羽交い絞め式に身体に巻きつけた加々美氏が笑顔で歩いてきた。
足取りは確かで、話し方や笑顔にも健康が戻っていた。笑顔で応えた私は、一階の食堂に誘い、コンビニで買ったアイスコーヒーを飲みながら、話しが弾んで90分も話し込んだ。
話題は中国の政治情勢(加々美)と農村の民の話し(私)だった。
微妙な違いはあるが、おおまかなところでは意見の一致をみた。
  
話しの具体的な内容は、明日からの中国出張から帰った後にしたい。これから午後の授業が始まるので。

2012/05/21

なぜ、私はTPPに賛成なのか

TPPに賛成である。

「TPPは農業・農民をつぶす」と、のどを嗄らして叫んでいる反対派の中に、実は農業と農民をつぶす役割を演じている者がある。
私はいつでも、どこでも農民の味方でいたい。どこでも、というのは、日本、中国、東南アジア、どこでも区別はない。
農業と農民をつぶす者は、市街地のなんと真新しい立派なビルに住んでいることか。この点は、日中共通である。日本も中国も農業所得だけで生活していける農民は、ほんの一握りだということも共通。そして、高齢化の甚だしさも共通している。


中国の農民は怒っているか?

中国農民のことを聞かれることがある。

○曰く、彼らは生活に満足しているのか?
○全土的な農民の反政府暴動は起きるのか?
○若者は村に残っているのか?
○貧富の差が拡大しているのに、農民に跡継ぎはいるのか?

 私の答えは、すべて NO だ。 
 2番目の質問に対する答えには「ただし」が付く。
 ただし、経済成長率が5%の線を超えたとき、農民と都市の半失業労働者はもはや、おとなしくできない可能性が極めて高い。 

2012/05/20

今春のゼミ生の就活は順調

私には4年生のゼミ生が19人いる。学部では多い方である。いま彼らは就活に忙しいが、今年は昨年以上に順調に内定をいただく傾向が強い。学生によっては大企業の内定を3つももらい、うれしい悲鳴をあげる者もいる。早々、内定先が決まり、ゼミでは卒業研究に専念したり、はやくも夏休みの計画を立てたりと、忙しいが指導教員としては、残る学生生活を楽しんでほしいし勉強もしてほしいという気持ちが強い。内定先は、大手物流企業、航空会社、自動車企業、家電メーカーなどなど。
 先日、大手企業で働くゼミ卒業生が、久しぶりに学校に姿をみせに来た。卒業して一年も経つと、やはり社会人の雰囲気が漂うが、私にとっては元ゼミ生である。職場の話しなども聞いたが、仕事を楽しんでいる様子に安心した次第である。

2012/05/18

日中関係の現状

日中関係の進展度を産・官・学・民の視角からみると、その順位は次のとおりであろう。
1、産=経済
2、民=人的交流(相互旅行を含む)
3、学=日中共同研究または中国研究、日本研究
4、官=政治・外交



2012/05/15

日中韓FTAとTPPに思う

年内の日中韓FTA交渉入りが合意されたが、おそらくは、TPPへの日本の参加がより確実にならなければ、この話は来年に持ち越しとなろう。中国は、三カ国FTAをTPPへの日本の参与度と天秤にかけながら進めるつもりだ。まずは韓国とのFTAを先行させ、その推移をみながら日本との交渉に臨む姿勢である。この点は、韓国も同様であり、場合により日本は仲間外れに会う可能性も否定できない。
 そこで重要となることは、日本のTPPに対する関わり方だ。私は、TPP参加が今後の日本にとって極めて重要な選択だと思っている。国際社会のなかで日本が選択できることは昨今減っているが、TPPは久しぶりに、日本が主体的に選択肢に直面する課題である。
 日本はTPP交渉で主導的な役割を担い、そして日中韓FTAやASEAN+3においても重要な位置を占め、発言権を強めるべきである。

2012/05/07

産学連携

明日から、ある企業の方々と一緒に中国出張です。いわゆる産学連携ですが、向こうでは地方政府と合作するので、産官学連携となるでしょうか。中国では、官学産と立ち位置がやや異なります。企業との連携事業でもっとも大事で難しいことは、学問的専門性に企業的センスや実務的感覚を織り交ぜることです。

2012/02/12

中国はバブルではない、、たんなる誤りの連鎖だ

中国の著名な経済学者には、中国経済は住宅バブルからソフトランディングしたとの見方が多いが、そもそも、それがバブル経済といえたかどうかというと、筆者の見方はかなり異なる。日本のバブルは、カラ需要が供給をせかせ価格高騰を招いたが、中国の場合まだまだ実体の供給は絶対的な不足状態である。たとえば、都市部には住宅を持たない農民工だけでも1億5千人いる。かりにかれらが都市に定住するとなれば、少なく見積もっても1億戸の住宅が必要である。では、バブルに見える現象はなんなのか?答えは、経済権力と政治権力の一体化にもとづく富の分配の極端な偏り、まちがった税政策、まちがった市場経済依存にある。
なによりも、長期的な視点から、経済権力を政治権力から引きはがす仕組みが必要で、引き続き、次期習政権最大の政策試練である。

2012/02/11

中国と日本の貿易収支、注目すべき最近の動き

中国の公式統計をみると、輸出と輸入が減少傾向にある。加工型輸出依存経済だから輸出が減れば輸入も減るのは当然のことである。あきらかに、EU経済の低迷を受けてのことだ。では、今後はどうなるか?答えはEU経済次第である。ではEU経済はどうなるか?ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガルに加え、いくつかの国が影響を受けているので、全体の回復にはやや時間がかかる見通しだ。一方のアメリカ経済は一進一退で、中国にとっては年3000億ドルの黒字国だ。影響は大きい。やはり、回復にはしばらくかかりそうだ。こうみると、中国経済は曲がり角にきていることは間違いない。
日本の貿易収支は赤字に転じたが、傾向的には予想されたことである。所得収支は貿易収支の赤字を埋める巨大さはますます進むから、経常収支が赤字になることはない。しかも貿易収支自体も、間もなく好転する可能性が高い。あまり悲観することはない。

2012/02/08

イチゴ農家の加藤くんのもぎ取りイチゴハウス

きれいなイチゴハウスです。一宮のイチゴ農家、加藤くんの経営する刈取りイチゴ園の内部です。高さが1メートルくらいあるので、歩きながら新鮮なイチゴを手で取って食べることができます。イチゴの香りがいい、味もいい。

2012/01/16

中華料理はおいしいのだが・・・・

現地で食べる中華料理はとてもおいしくて、いつも食べすぎる。短期間の旅行でも、帰りの飛行機のなかで、やはり太ったと感じるのが常である。
でも、最近、気になることがある。それは、なんでもおいしいのだが、食材がなんであれ、なんでも同じ味がするということだ。ある店で中華料理の数々を食べたとする。おいしいのである。だが、口の中に残る食後感というか、あと味というか、一本調子なのである。
なぜなのだろう。いま、その原因をさがしているのだが・・・・・

2012/01/09

New york Times 日本の回復を書く

今朝のNewyork Times web版 World ブロック、「日本失敗の神話」と題する署名論文記事を掲載。久しぶりに、日本の記事なので読んでみた。失われた10年、そこから回復して、通信インフラの高さ、失業率の低さ、平均寿命の延長、国際収支の安定など肯定的な側面を強調。アメリカより優れた面を紹介。アメリカの現状が急速な悪化をしていることを憂うあまり、日本への羨望となっているのかもしれない。アメリカ人心理の反映であろうか。わが日本を振り返り、いいところを再認識すべきかな、という気にもなる記事である。 http://www.nytimes.com/2012/01/08/opinion/sunday/the-true-story-of-japans-economic-success.html?pagewanted=1&_r=1&ref=asia
www.nytimes.com
Instead of feeling sorry for Japan, the United States should look to it as a model for economic recovery.

2012/01/01

日本帰化の留学生セミ生のこと

ゼミ生だった中国人留学生がいます。彼は修士終了後、私の紹介で、中国ビジネスを行うある企業に就職。それから7年、年賀状で日本に帰化した知らせを受けました。まじめな有能な学生でした。月並みだけど、これからの彼の人生に幸多かれと祈るばかりです。

2011/12/28

加藤君、上海で撮った写真。わざわざ鋼材置き場へ行ってもらいました。

イチゴ農家の加藤くん

イチゴ農家の加藤くん。また上海で頑張ってきたようだ。
まったく、この国の農政はどうなっているのだろう。今度の農業関連予算の作り方、何の工夫のかけらもない。これで消費税?呆れて、ものもいえない。100万円でもいいから、加藤くんに回してくれ、と叫びたいのである。

2011/12/27

中国の外貨準備に占める円

中国の外貨準備高は、元売りドル買いと輸出超過、海外旅行者増が重なって3兆ドルを優に超えている。大部分はドルとユーロだが、円がどのくらいあるかは、中国が公表していないので不明である。私はかなりあるとみているが、それが円高の大きな理由でもあると思う。いまは帰国した大学の元同僚、馮昭奎氏(中国社会科学院名誉研究員)は、「日本を潰すことは簡単だ。円高にすればいいのだ」と、昨年の9月の事件の後、中国紙に寄稿したものだ。今度北京で会ったときこの議論をしてみようと思う。彼は中国では、日本研究の第一人者で影響力も極めて大きい人物だ。日本を熟知しているから言えることでもある。
先ほどのブログで、私は誤って、中国が「日本国債」をどれくらい持っているかを調べていると書いたが、勘違いで、「外貨準備のうちの円」について調べている。野田総理が中国国債を100億ドル買うと言ったものだから、余韻が残っていたようだ。

中国鉄鋼業は不況に進んでいる、他

いつも中国が発表する経済指標を眺めてはいるが、最近気になることは鉄鋼生産や生鉄の生産がマイナスになってきたことだ。過剰生産である。その背景は多様だが、鉄鋼を多消費する固定資産投資、たとえばマンション、道路、工場、造船などの先行投資部門からの受注減予測があることは確実。中国には零細企業を含めると、鉄鋼メーカーが千社以上あるが合理化は遅々として進まない。おそらく、鉄鋼メーカーは改革開放以来、はじめての不況に直面する可能性が否定できない。

海外への資本逃避(キャピタル・フライト)の動きも気になるところ。2008年から毎年中国から数百億ドルにのぼる資本逃避が起きている。資本逃避とは違法取引であり、中国資本が海外に投資するFDIなど正規のルートとはまったく異なる概念。2010年は600億ドル、2009400億ドル、2008260億ドル、だんだんと増えている。手口はさまざまあり、海外取引先との合意による不正伝票作成はもっとも普通の常套手段。来年、中国経済は減速幅が拡大するので、過剰な国内資本はさらに、この手を使って海外へ流れていくはずである。

いま、私は中国の日本国債保有額の推定作業をしている。正確な額は、だれも分かっていない。中国政府が秘密にしているからだ。

2011/12/25

中国経済の天井と深刻な資金余剰

中国経済が、天井に当たり始めたような印象がする。といって、バブルがはじけるとか、成長率が5%台、大幅に下がるとかというわけではない。天井は、文字通り天井だから、いままでのような12,13%といった高い成長はもはや過去のことになりつつあるということだ。たぶん、8~6%という数字に向かって経済の転換が進む可能性がある。
経済学に「限界成長率逓減の法則」という考え方があるが、いまの中国はまさにこれが当てはまりそうな気配がある。中国は構造的な民間資金過剰、政府部門の赤字という構造問題を抱えており、一向に変わらない。
これは、税収システムの問題もあるが、民間部門が国内投資先を持っていないことが根本的な問題だ。投資収益を確保できる安全な投資先が見つけられないというわけだ。では、余剰資金はどこへ行っているのか、その答えは、外国への直接投資と間接投資つまり証券投資である。一部は、資本逃避つまり海外への資金流出だ。
民間のありあまるお金をいかに有効に使うのか、この点が中国のマクロ経済政策の要諦である。

2011/12/20

農民はマンション住民に、しかしここに矛盾も棲む

中国では、農地を収用される代わりに、マンションを与えられることが進行している。一人70㎡、3人家族の場合210㎡となる。そこで、農業をやめてマンションを貸して家賃収入で生活しようとする者が増えている。
農民家主の誕生である。しかし、これがうまくいくとは限らない。借り手がいればいいが、場所が農村なので借り手がそうはいない。そこで、どうなるかといえば、仕事を失ったマンション元農民住民が増加することになる。豪華な摩天楼のなかで、多くの家持無産者が住むという新しい矛盾が棲息することとなる。

2011/12/16

日本の農地法

日本農業再生と強化のためには、まず、農地法を改正するか廃止することが一丁目一番地。畜産農家とて同じこと。
土地の狭さ、所有権、利用権移動の規制の多さ、複雑さ、大小の官僚介入の機会の多さと煩雑さから農民を解放させてあげたい。
農業経営は、規模の大きな農民、農民が共同で設立した株式会社、物売り・金貸し代行業から足を洗った農協による直接的取り組みも大賛成。

2011/12/05

国会中継を聞いて、日本の将来を憂う

今日、登下校の際、ラジオで国会中継を聞いた。一言、感想をいうと、国会も地に落ちたと実感するのみである。いま、突然の感想ではないが、今日は特にひどかった。内閣の人材のお粗末さはともかく、質問する野党の質問内容の程度の低さ、見識のなさ、品格の欠如も相当なものだ。ただ、声を荒げて、一国の総理に向かって「あなた」呼ばわり。内容ときたら、三文週刊誌以下的な下劣なものだ。ただ足すかし、失言ねらいの攻撃のみ。これでは、税金の無駄遣い以外のなにものでもないではないか。もっと、建設的な意見交換ができないものかね・・・・・・・・・・・。わずかの所得税だが、払いたくないなあ。増税?議員定数の削減はもちろん、国会議員に対する常識問題テスト実施後でないと応じかねる。

2011/12/04

加藤くんの後ろ姿(上海)

なんとか、成功してほしい。いま、彼は、「国際農業経営者」としてもっとも苦しい時にあるようだ。この坂道を登り切ることができればいいのだが。

加藤くんのこと

加藤くんは、上海でイチゴ栽培をしている。日本ではコメや野菜を作り、栽培技術を市民農園を楽しむ人に啓蒙するなど、多くの活動を行う青年だ。昨日は、帰国したばかりで忙しいうえに疲れているのに、私が主宰する研究会に来てくれた。最近は、そんな彼に注目するマスコミが増え、顔も広くなった。彼がごくまれに発する弱音を聞くと、この国は農業振興などと宣伝はするが、実は、ほとんど彼のような意欲ある青年農民の役に立つことは何一つしていないことに驚くことが多い。そのうえに、TPPに関する発言をすると、全農や全中や農協が脅し文句をいう。農協とはなんのだろう。農協や連合会のみなさん、もう一度、農協法をじっくりと読み直し、弱者を救えよ。税法上の優遇措置は、農協の儲けのためにあるのではないはずだ。

2011/11/10

地溝油

 数年前、ハルビンで食べたナスと豚肉を柔らかく油で炒めた料理を、真昼中、冷たいハルビンビールを飲みながら食べようとしたことがある。中国のビールのアルコール度は2~3度で弱いがおいしい。


そのナスと豚肉料理だが、熱い一口を箸で口に運んだが、とたんに、機械油の香が口中に広がった。とても食べられたものではなく、吐き出して、店員に文句を言った。店員は、何も言わずに、皿を持って厨房の奥に消えた。結局、代わりを頼むことなく、ビールだけ飲んで外へ出た。

その料理に使った油こそ、いま話題の地溝油に違いない。地溝油とは、下水から取った油を再生させて販売する食用油のことだ。流しから捨てた使用済みの油、そして機械油などを再び使うのだ。いま大きな問題になっており、政府もやっと、対策に乗り出した。

2011/11/01

上海市内の黒い川。環境問題はいまなお深刻だ。

農業問題研究44年

大学1年から数えて、農業問題を経済学の視点で研究に取り組んでから44年が経った。脇目をふらず、一筋だ。就職したら農村調査マンとして生きることを決めていたので、関係のない仕事はしなかった。32歳のときでも、月の給料は4万円のときがあった。それでも農村調査を続けた。そして多くの人に助けてもらったが、農業問題と生きることを変えるつもりは微塵もなかった。日本全国の農民と会い、話を聞き、そしていまは、中国の農民と話している。そうして得た結論の一つは、農民の立場や考え方、生き方は、国境を超えても、日本と中国が恐ろしいほどそっくりなことだ。農民を盾に身を守ろうとする集団や個人、政治家、官僚がいるのも似ている。なぜだろう?制度や環境、条件が違っても、農業にはもともと国境がないからである。もちろん、国家、制度、環境、条件の差は農業にとっては大きな問題である。しかし、その差を超えて、農民という次元になると、一つなのである。この点は、アメリカ、ドイツ、イタリアなど、私が訪れた多くの国にも当てはまる。